金沢―敦賀の3年前倒し開業が決まった北陸新幹線の福井駅部(JR福井駅舎の右側)。福井までの先行開業も今後検討する=2014年11月

金沢―敦賀の3年前倒し開業が決まった北陸新幹線の福井駅部(JR福井駅舎の右側)。福井までの先行開業も今後検討する=2014年11月

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北陸新幹線敦賀開業3年前倒し 異例の福井県提案が結実

福井新聞(2015年1月9日)

 8日に決まった北陸新幹線金沢―敦賀の開業3年前倒しは、福井県が独自に試算した工期短縮案が発端となり"満額回答"を勝ち取った。新幹線の整備効果は安倍政権の重要課題である「地方創生」に資するとの政府・与党内の声を追い風に、整備スキームが地方からの提案により見直された格好で「ウルトラCが決まった」(県幹部)。さらに福井先行開業も検討することになり、大きく前進した。

 「国の仕事に対して異例のことではあるが、地方の立場であえて提案してきた」

 西川知事は5日の会見で、政府・与党の合意を目前に手応えを語っていた。県は2013年7月から部局横断の特別チームを立ち上げ、同10月に、九頭竜川橋梁(きょうりょう)や新北陸トンネルの工法工夫で工期の3年短縮が可能とする独自案を発表。県の東村健治総合政策部長は「技術的な課題を一つ一つ検討する大変な仕事だったが、そこまでやった沿線自治体は福井だけだった」と振り返る。

 県の「異例の提案」は、本県選出の国会議員らが入った与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)に"採用"され、PTは昨年7月に政府に要望。同9月から政府・与党のワーキンググループ(WG)による具体的な財源の検討が進んできた。

 整備新幹線は「無駄な公共事業」という指摘もある中、PTメンバーで県選出の滝波宏文参院議員(自民党)は「(政府が目指す)成長戦略、国土強靱(きょうじん)化に、地方創生という大きな波がかぶさってきた」と満額回答の背景を解説する。政府が地方創生の目玉として進めようとしている東京からの企業の本社機能の地方分散にとっても「新幹線はツールとして非常に重要という流れになった」という。

 一方、昨年末にWGで急浮上した金沢―福井を先行させることも、今後の検討課題として政府、与党の合意文書に盛り込まれる方向となった。16年度の政府予算案を編成する中で正式な政治的なテーマになる。

 先の衆院選公約に先行開業を掲げた自民党の稲田朋美政調会長はWG後、記者団に「なるべく早く開業することは福井にとっても、北陸全体の活性化にとっても非常に意味がある」と強調した。

 実現には、福井駅に新幹線や在来線の新たな車両基地が必要かどうかなど、財源面、技術面ともに課題は多い。ただ滝波氏は「国が福井に風を向けてきており、背伸びしてでも取りにいくべきだ」と指摘する。県内部にも「福井駅の先行活用が無理でも、敦賀駅での乗り換え利便性を向上させるような予算拡充の流れにつなげていくことはできるのでは」という見方もある。

<strong>「夢実現近づいた」 福井先行含め自治体・経済界</strong>

 政府・与党が北陸新幹線金沢―敦賀開業を3年早めることを決め、かつ福井までの先行開業を検討することになったことを受け、県内の沿線自治体や経済界からは「大きな進歩」「夢の実現に近づいた」と喜びの声が上がった。

 西川知事は3年短縮の見通しが立ったことについて「関係者に感謝し、県内各界の精力的な活動とご支援、ご協力に厚くお礼申し上げる」とコメント。福井先行開業については「政府・与党において、しっかりと議論を深めていただきたい」とした。

 沿線自治体の首長からは延伸に備え、まちづくりに対する決意の声が聞かれた。あわら市の橋本達也市長は「芦原温泉駅周辺整備をはじめとする関連事業について、県や沿線市町などと力を合わせ、スピード感を持って取り組んでいきたい」、越前市の奈良俊幸市長は「今後は新たなスケジュールに沿った南越駅(仮称)の周辺整備を促進し、交流人口や定住人口の増大につなげていきたい」とした。
 敦賀市の河瀬一治市長は「新幹線を活用したまちづくりを一層加速する必要がある」と述べ、赤レンガ倉庫の活用を含めたまちづくりの推進や観光誘客に取り組む考え。福井駅先行開業については財源の問題を挙げつつ、県全体に早期開業の経済効果が波及することに期待感を示した。敦賀商工会議所の有馬義一会頭も「開業に向けた受け皿、特にまちづくりを急ぐ必要がある。県や市などと一体で、その実現を加速させていきたい」とコメントした。

 福井までの先行開業を目指すべきとの緊急アピールを発表した福井経済同友会の八木誠一郎代表幹事は「敦賀までの3年前倒しが決まり、福井先行開業が検討事項に入ったことは、福井にとっては大きな進歩」と評価した上で「(福井先行開業を訴えてきた)稲田朋美政調会長をはじめ政府与党関係者には引き続き、実現に向けて取り組んでほしい」と切望した。

 同温泉旅館協同組合女将の会の伊藤昌代会長は「新幹線を福井に、という長年の夢の実現に近づいた。ただ金沢、富山とは大きな差がある。芦原をもっともっとPRしていく必要がある」と気を引き締めた。

 田村康夫県会議長は「一丸となって行ってきた要請活動の成果で喜ばしい」とコメントを出した。

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