富山県東部の交通結節点として位置付けられる北陸新幹線の新駅「黒部宇奈月温泉駅」。駅周辺は田園風景が広がり、街として整備されていない=同県黒部市

富山県東部の交通結節点として位置付けられる北陸新幹線の新駅「黒部宇奈月温泉駅」。駅周辺は田園風景が広がり、街として整備されていない=同県黒部市

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富山・黒部市 田園に駅 街つくらず 役割は交通結節、観光玄関 北陸へ延びるレール(7)

福井新聞(2015年2月23日)

 北アルプス・後立山連峰の眺望が美しい富山県黒部市。北陸自動車道黒部インターチェンジ(IC)から南に1キロほどの田園風景の中に北陸新幹線の新駅「黒部宇奈月温泉駅」はある。

 同駅は市街地から約3キロ。福井県内の新幹線予定駅と比べると、市街地から離れた武生IC付近に整備される南越駅(越前市)と立地条件が似ている。
 駅は富山県東部の交通結節点という位置付けだ。黒部峡谷、立山の2大観光地の玄関口にもなる。新幹線駅では日本一という530台分の無料駐車場を備え、市街地や周辺市町と結ぶ路線バス、乗り合いタクシーを充実させる。私鉄の富山地方鉄道は同駅に隣接する新駅を整備して新幹線「はくたか」の全列車と接続しやすくし、新駅から黒部峡谷入り口の宇奈月温泉駅まで約20分で結ぶ。

 一方、駅周辺はレンタカー店など工事中の建物がいくつかあるものの、街として整備されていない印象だ。

 「駅周辺は『森の中の駅』というコンセプト。あえて大きな街はつくらない計画」と市の担当者。駅西側で商業施設などの誘致を目指しているが、民間投資はまだ見えない。

 黒部商工会議所の川端康夫会頭は「金沢などの都市型の駅や大型開発ができる地域とは違う。まずは周辺地域全体の交通のハブになるのが一番。駅の乗降客が増えれば、年月をかけて自然と街も形成されていく」とみる。

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 ビジネスでは新幹線効果をにらんだ動きが出ている。

 創業者が富山県出身のファスナー大手YKK(本社・東京)は来年3月までに、生産拠点がある同市に本社機能の一部を移転する計画だ。自然環境を生かした低エネルギーの住まいをコンセプトにした賃貸住宅の街づくりも進めている。

 YKK黒部広報グループの担当者によると、本社機能の移転は災害のリスク分散が狙いだが「新幹線で東京との行き来が便利になる」ことが背景にある。賃貸住宅の街も「開業で首都圏の人たちが黒部市に住もうと考える可能性が出てくる」と期待する。

 黒部宇奈月温泉駅の乗降客数の目標は1日当たり2700人。市の担当者は「基礎となるのはビジネス客。近隣市町も企業誘致に力を入れており、ビジネス利用を固めた上で観光客を上積みしたい」と力を込める。

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 黒部市にある富山県随一の温泉地、宇奈月温泉は新幹線開業を待ち望んでいる。

 同温泉の宿泊客数は1990年に約58万人だったが、右肩下がりで、昨年は26万人とピーク時から半減した。

 市は木のぬくもりが感じられるよう温泉街の景観を統一する助成事業を打ち出し、土産物店など約30軒が改修を進めている。新幹線効果は既に表れ、各旅館では例年より早く5月の連休や紅葉時期の予約が埋まっているという。

 ただ、新幹線でアクセスが良くなる分、黒部峡谷を目的に訪れた観光客が同温泉で宿泊せず、他地域に向かってしまう懸念もある。市や黒部・宇奈月温泉観光局などは開業に合わせ、同温泉に泊まらないと日程的に参加できない峡谷トロッコ列車の特別ツアーを商品化した。宿泊する必然性をつくるのが狙いだ。

 同温泉女将の会「かたかご会」の濱田昌子会長は「大事なのは、訪れたお客さまに満足してもらうこと。この1年で良い評価をいただかないと次につながらない」。期待感と危機感が入り交じり、開業を待っている。

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