日本海の眺望と地酒を楽しむ「越乃Shu*Kura」の乗客=柏崎市

日本海の眺望と地酒を楽しむ「越乃Shu*Kura」の乗客=柏崎市

新潟県 北陸新幹線

北陸新幹線沿線 癒やし満載 観光列車人気

新潟日報(2015年5月1日)

 北陸新幹線沿線を走る在来線の「観光列車」が人気だ。ご当地グルメを提供したり、特別な内装にしつらえたりと趣向を凝らす。JR東日本が運行する地酒列車「越乃Shu*Kura(しゅくら)」は、ほぼ満席状態が続く。並行在来線の「えちごトキめき鉄道」(上越市)も来春、天井近くまで窓を広げた新車両をデビューさせる。観光客を積極的に取り込むことで乗客を増やし、経営の安定化と地域の活性化を目指す。鉄道の新しい旅の魅力と課題を探った。

◎JR、地酒や生演奏魅力 トキ鉄も来春に新車両 地域と協力活性化目指す

 ジャズの生演奏に耳を傾けながら、乗客がおちょこを傾けた。4月中旬、3両編成(70席)の「しゅくら」は、日本酒ファンらでほぼ満席だった。

 長野県の会社員山本潤さん(32)は車窓から日本海を眺めながら「お酒と景色を同時に楽しめて、とてもぜいたく」と上機嫌に語った。北陸新幹線を使い、上越妙高駅で乗り換えたという。

 JR東がしゅくらの運行を始めたのは昨年5月。11月までの週末、高田を発着駅に主に十日町や越後湯沢と1往復し、平均乗車率は約9割に達した。北陸新幹線開業後は、上越妙高発を午前9時51分に設定し、下りの北陸新幹線から8分で乗り継げるようにした。

 4月からは古民家風列車「おいこっと」を十日町-長野間で運行。十日町を結節点に、しゅくらと、おいこっとの二つの観光列車に乗れるようになった。新潟支社広報グループは「北陸新幹線の上越妙高と長野の間を巡る新たな楽しみに育て、新幹線の利用増加に結び付けたい」と意気込む。

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 来春、観光列車を導入する「えちごトキめき鉄道」は、沿線風景を楽しめるように窓を天井近くまで広くし、車内で地酒や料理を出す予定だ。

 信越線と北陸線の一部をJRから引き継いだトキめき鉄道の路線98キロは、妙高山や日本海など旅行者を飽きさせない景色が続く。上杉謙信や高田城といった歴史もある。

 同社経営基本計画によると、路線1キロ当たりの乗車人数は開業年で1日約1900人。沿線で人口減少が進み、10年目には約1700人にまで減ると予測している。観光客の取り込みを経営の安定に向けた柱の一つに位置付ける。

 今年1~2月に列車の愛称を募集したところ、応募2千件余りのうち県外者が7割を占めた。トキめき鉄道の渡辺明彦総合企画部長は「県外からかなり注目されている。魅力のある観光列車にしていきたい」と気を引き締める。

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 観光列車の人気をどう地域の活性化につなげるか。鉄道会社と地元の連携が問われている。

 JRの場合、しゅくらと周遊バスや観光タクシー、ハイキング企画を組み合わせてPRしている。

 長野県の「しなの鉄道」は観光列車「ろくもん」を昨年7月から長野-軽井沢間で運行している。停車駅では温泉のお湯で入れたお茶の振る舞いや、地元NPO法人が管理する庭園の散策などが好評という。

 4月中旬、おいこっとに乗った長野県の農業市川美津夫さん(64)は「走るだけの観光列車ではなく、地元住民との触れ合いができるような工夫をしてほしい」と求めた。

 JTB総合研究所(東京)の波潟郁代企画調査部長は「観光列車と観光地巡り、宿泊施設を一体にした旅のプランを売り出すことが重要だ」と指摘。「乗客がゆっくり滞在して楽しめる工夫を鉄道会社と地域住民が議論してほしい」と提案している。

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