福井県内最大級の大きさを誇る木根橋道場=勝山市北谷町木根橋(道場研究会提供)

福井県内最大級の大きさを誇る木根橋道場=勝山市北谷町木根橋(道場研究会提供)

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浄土真宗唱える施設「道場さん」の現状とは 使われる建物、地域性豊か

福井新聞(2015年5月27日)

 浄土真宗を信仰する福井県嶺北地方の山あいの集落で、住民たちが定期的に集まって念仏を唱える施設「道場(どうじょう)さん」の現状を本にまとめようと、福井県内の住職5人が8年前から進めてきた取材が大詰めを迎えている。使われる建物は、寺院のような外観から一般の民家や公民館まで地域性豊か。住職らは「道場さんの存在は福井県ならではの特色。浄土真宗の教えを、地域で500年以上受け継いできた人たちの心の絆を感じてほしい」と年内の出版を目指している。

 道場さんは浄土真宗中興の祖、蓮如(れんにょ)上人の時代から数多く作られたとされる。蓮如上人が布教の拠点としていた吉崎御坊(現あわら市)に出向いて学んだ集落の有力農家が、地元に戻って村人たちに念仏や法話を伝えた場所だという。寺院がない環境でも有力農家は自宅を「念仏道場」として開放し、道場主として布教に努めた。雪深い地域では死者が出た場合にすぐに僧侶が来られないため、道場主が代役として通夜を取り仕切ることもあったという。

 本にまとめようとしたきっかけは、最勝(さいしょう)寺(福井市脇三ケ町)の佐々木教幸住職(63)に、後継者不足に悩む県外の寺院から「福井には僧侶がいない『道場さん』という施設があるらしいが、どのような運営なのか」と問い合わせが入ったこと。佐々木さんの「詳しく調べてみよう」という呼び掛けに福井市、勝山市、永平寺町の住職4人が応じ、2007年に「道場研究会」を立ち上げた。

 これまでに取材したのは大野市、勝山市、福井市美山地区、永平寺町、池田町の計130カ所。地域の住民が家族のような人間関係の中で伝統を守り、定期的に「講」と呼ばれる仏事を続けている。同会によると、取材できていない場所を含め嶺北には200カ所以上の道場さんがあるという。

 大野市和泉地区の川合道場は県内で最も歴史が古いとされ、今も住民が毎朝集まってお参りをしている。元日の朝には、地区内の全員がお参りし、雑煮を食べる伝統行事「お箸はじめ」が受け継がれている。

 勝山市の竜谷道場(野向地区)、木根橋道場(北谷地区)などは、何十畳もある本堂や鐘突き堂も備えた寺院並みの施設。一方、火災などで建物が消失し、公民館や集落センターを活用している地域もあった。

 道場主は世襲が基本だが、後継者不足から地域で輪番制にしているケースもあった。それでも過疎化や高齢化の問題から、道場存続の危機に面している地域が多かった。

 研究会会長を務める厳教(ごんきょう)寺(福井市上森田町)の朝倉善昭住職(61)は「地域で道場さんを守りながら、仏の教えを後世に伝えている風習は本当に尊い。本を通じて浄土真宗の文化の地域性と奥深さを知ってもらいたい」と話している。

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