復刻版を手に秋山徳蔵の著書の原書を興味深く見る来場者=6日、福井市の県ふるさと文学館

復刻版を手に秋山徳蔵の著書の原書を興味深く見る来場者=6日、福井市の県ふるさと文学館

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秋山徳蔵の著書、貴重な原書展示 福井で「仏蘭西料理全書」など2冊

福井新聞(2015年6月7日)

 宮内庁で主厨長(しゅちゅうちょう)を務め、「天皇の料理番」として知られる越前市出身の秋山徳蔵(1888~1974年)の著書「カクテル」「仏蘭西(ふらんす)料理全書」の貴重な原書の展示が6日、福井市の県ふるさと文学館で始まった。徳蔵をモデルにした連続テレビドラマが注目を集める中、大正時代の日本に正統な西洋料理を伝えようとした熱意や、新しい文化を積極的に受け入れる柔軟な考えが感じられる。7月15日まで。

 2冊の原書は、いずれも北海道在住の女性が5月に県立図書館に寄贈した。コックをしていた父親が生涯大切にしていた蔵書という。

 「カクテル」は1926年出版の第4刷で、全国のほかの図書館で原書の所蔵は確認されていない。日本初のカクテルの参考書とされ、ハイボールやジンフィズといった今でも見られるカクテルの作り方を数多く紹介している。酒類にも繊細な心配りを怠らなかった徳蔵の視点で、素材やグラス、道具の注意点を丁寧に記している。

 「仏蘭西料理全書」は、1923年の出版直後に関東大震災が起きた影響もあり、全国の図書館で現在確認できる唯一の原書初版。専門の編さん所を置き、約10年かけて書かれた千数百ページの大著は、徳蔵がフランスでの修業時代に師事した名シェフの著書を参考にしている。当時としては高額だったが、西洋料理を学ぶ人の"バイブル"といわれた。

 原書とともに寄贈された大正から昭和初期にかけてのコックの集合写真や西洋料理店のメニューといった資料のほか、「カクテル」の複製、「仏蘭西料理全書」の復刻版など約20冊の関連図書も並んでいる。

 「仏蘭西料理全書」を見た福井市の60代女性は「ドラマで(徳蔵を)初めて知ったが、あの時代によくぞここまでの本を作ったと思う。いちずな努力の塊のような人」と感心した様子だった。県立図書館の渡辺力(つとむ)主任は「郷土が生んだ偉大な料理人を貴重な資料を通じて知ってほしい」と話していた。

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