木曽郡南木曽町に芸術家が滞在し、地元の人と交流しながら感じたことを生かして旧妻籠小学校で発表する初の試みが始まっている。学生時代に金属工芸を学んだ同町の地域おこし協力隊員、伊藤恵理さん(33)が「南木曽アーティスト・イン・レジデンス」と名付けて企画し、知り合いの芸術家らに声を掛けた。
伊藤さんは東京都出身。東京芸大大学院を修了し、昨年4月に協力隊員として村に着任した。同小を工房として借り、鍛金教室を開いてきたが、「いろんな発想が湧く場所なので、もっと活用したい」と思い立ち、今月1日に始めた。
20、21日に開く美術展(午前10時〜午後5時)では、伊藤さんを含めて4人が作品を発表する。画家の添野郁(かおる)さん(31)=神奈川県座間市=は、書庫を舞台にして人がたくさん歩いている様子を、音も使いながら表現する。4日、打ち合わせをし、「校内がきれいに保存されていて、わくわくする環境」と話した。
英国生まれで、インスタレーション(設営芸術)のアンナ・ゴンザレス・野口さん(23)は「町並みがきれいで、伝統的なものが保存されている。いろいろとインスピレーションが湧いてくる」。伊藤さんは、町内で見つけた建具や木の皮、小枝、同町田立の和紙などを使う予定だ。
6日には、旧中山道の妻籠宿を描いた浮世絵に登場する馬籠峠を歩く人々になりきって楽しむ講座を、午後1時から現地で開く(雨天の時は妻籠宿)。12日にはヒノキのかんなくずで、巨大な未確認生物を作る講座(午後1時、妻籠小校庭)も予定している。
14〜18日の午前10時〜午後5時には制作現場を公開するほか、21日午後1時からは美術展に出品する4人の説明を聞きながら、作品を見る鑑賞ツアーもある。いずれも無料。伊藤さんは「古い校舎を舞台した現代芸術を楽しんでもらいたい」と話している。
問い合わせは伊藤さん(電話080・4176・0057)へ。