丸みを帯びた石が整然と積み上げられた「ぼたもち石積み」。石積みの前で和栗俊一さんが解説する=上越市牧区

丸みを帯びた石が整然と積み上げられた「ぼたもち石積み」。石積みの前で和栗俊一さんが解説する=上越市牧区

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上越・牧区「ぼたもち石積み」 幕末の技見に来て 地元旅館、ぼた餅販売しPR

新潟日報(2015年9月10日)

 上越市牧区下湯谷の一角に「ぼたもち石積み」と呼ばれる石垣がある。幕末のペリー来航時に品川沖(東京)で大砲を置く御台場を築いた優秀な石工職人たちが、地元の資産家に招かれ造ったとされる。北陸新幹線開業を機に、埋もれた地域の歴史遺産をPRしようと、近くの旅館が手作りのぼた餅を売り出し、来訪を呼び掛けている。

 石積みは、区総合事務所から3キロほどの諏訪神社の近くにある。ぼた餅を思わせる丸みを帯びた石が5メートル以上の高さまで、隙間なく積み上げられていることからこの名が付いた。長さは100メートルほど。

 石を積んだ職人は、長野県野沢温泉村出身の丸山忠右衛門(1826~1890年)と弟子たち。野沢温泉村教育委員会によると、忠右衛門らは嘉永6年(1853年)、ペリーの来航に備え、自身が考案した丸石積みの技法を駆使しながら品川沖に御台場を造った。牧区の歴史に詳しく地元で旅館を営む和栗俊一さん(64)の話では、かつて石油の掘削で巨万の富を得た西条家にその実績を買われ、屋敷周辺の石垣造りを頼まれた。

 西条家と忠右衛門らが出会ったきっかけは、江戸時代に上越市牧区を経由し、同市柿崎区と長野県飯山市をつないだ「塩の道牧峠ルート」(61キロ)。当時は塩の道の往来が盛んで、西条家は忠右衛門らの存在を人づてに知った。「金はいくらでも出すから権威のある石垣を造ってほしい」と頼んだ。正確な完成時期は不明だが、10年がかりで石垣ができたという。

 西条家の屋敷はその後、取り壊されたが、整然と並べられた石垣は崩れることなく、現在まで美しい外観を保っている。

 和栗さんは「石油掘削で牧区が輝いていた時代を象徴する資産だ」と語る。北陸新幹線を追い風に石垣を観光スポットにしようと今夏、手作りのぼた餅を120円(税別)で売り始めた。地元のもち米を丸め、あっさりとしたあんこを包んだ上品な味わいだ。「当時はぼた餅をおなかいっぱい食べてみたいと願う貧しい人たちもいた。その思いも語り継ぎたい」と話した。

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