大勢のクライマーが訪れる雑穀谷の岩場=立山町芦峅寺

大勢のクライマーが訪れる雑穀谷の岩場=立山町芦峅寺

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クライミングの岩場残して 立山の雑穀谷、ダム計画で懸念の声

北日本新聞(2015年11月29日)

■県も理解 規模再検討

 県が常願寺川支流の雑穀谷(立山町芦峅寺)で建設を計画している新たな砂防ダムに対し、「岩場の一部が使えなくなる」とロッククライミングの愛好者から影響を懸念する声が上がった。県は理解を示し、当初予定していた2016年度の着工時期や規模を再検討することにした。愛好者は「ダムは住民の安全に不可欠だが、岩場を守る工法を探り、影響を最小限に食い止めてほしい」と願う。(社会部・小幡雄也)

 雑穀谷の岩場はさまざまな登山ルートがあり、ロッククライミングの初級者でも楽しめる。近くまで車で乗り付けられるのも人気の理由で、県内外から大勢のクライマーが訪れ、県警山岳警備隊も訓練に利用している。

 県立山土木事務所によると、ダム工事は1952年度から続く砂防事業の一環。急斜面の雑穀谷は土砂が削れやすく、常願寺川の氾濫を防ぐため、下流へ流れる土砂をせき止めるダムが必要という。

 現在は12カ所にダムが設けられている。下流から3番目と4番目のダムの間にスペースがあるため、新たなダムの建設計画が浮上し、2016年度の着工を目指していた。同事務所砂防班の奥村係長は「ダムを多く造ることで、万一の際に下流域の住民を守ることができる」と説明する。1969年と2004年に豪雨による土石流が発生したが、砂防ダムの効果で被害を最小限に抑えられたという。

 新たに計画されたダムは約50メートルの谷幅いっぱいに建設される予定だった。同事務所は10月中旬、山岳関係者に岩場の一部が使えなくなる可能性があることを説明した。だが11月に入り、構造上の問題で建設計画の見直しが必要と判断。さらに愛好者の声にも配慮し、16年度の着工を延期することにした。奥村係長は「人気の高いクライミングスポットなので、継続して利用してもらえる方策を考えたい」と話す。

 フリークライミングジム「Gecko(ゲッコー)」(富山市野々上)のオーナーで県山岳連盟会員の土肥浩嗣さん(53)は計画の説明を受けた後、「ことしが最後のチャンスかもしれない」と頻繁に岩場を訪れたという。計画再検討の知らせに「ひとまずほっとした。岩場が埋没しないよう配慮してほしいが、ダム建設は防災上仕方がないので難しい問題だ」と話す。

 金沢市の宮保順志郎さん(67)は「アクセスや岩の質など、北陸でここまで魅力的な岩場はない」と、毎年雑穀谷の岩場を訪れている。若者の間でクライミング人気が高まっている点も挙げ「若い人が練習するのにも良い環境。何とか残す手だてはないか探ってほしい」と要望する。

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