読み札、取り札それぞれ100枚が公開されている橘曙覧直筆の百人一首=6日、福井市橘曙覧記念文学館

読み札、取り札それぞれ100枚が公開されている橘曙覧直筆の百人一首=6日、福井市橘曙覧記念文学館

福井県 福井・永平寺

曙覧直筆の百人一首 記念館で展示

福井新聞(2016年1月9日)

 幕末の歌人、橘曙覧(1812~68年)が一枚一枚、直筆した百人一首かるたが福井市橘曙覧記念文学館で展示されている。2014年、同館に寄贈されたもので、取り札、読み札とも一枚も欠けることなくそろっていて、同館では「曙覧は書家としての評価も高く、貴重な史料」と話している。

 曙覧は現在の同市つくも1丁目の商家に生まれた。家督を弟に譲った後、隠せいし、歌や学問に打ち込み、福井藩主松平春嶽らとも親交があった。「たのしみは―」で始まり「―とき」で終わる和歌「独楽吟」で知られる。

 展示されているのは、曙覧と交流のあった福井藩士上月久尾(こうづきひさお)から頼まれて書いた、取り札、読み札それぞれ100枚と、札をくるんだ紙製の包み「帙(ちつ)」、これらを収めていた木箱。上月家の子孫宅に受け継がれていた。同館によると、30年以上公開されたことがないという。
 木箱には上月久尾から頼まれて、かるたを書いた旨が記されている。また帙には一枚一枚心を込めて書き上げたことを表した「吹よせし 風のもみぢも小くら山 千(ち)しほならぬハ一葉だに無し」の歌が書かれている。

 読み札にはそれぞれ、読み手の名前と歌が優美な文字で記されている。かるたとして使われた様子はなく、非常に保存状態は良い。札は縦7・8センチ、横5センチの大きさで、同館の内田好美学芸員は「筆で限られたスペースに文字を収めるのは集中力がいるが、乱れることなく200枚書かれている。丁寧な文字から、上月久雄との親交の深さがうかがえる」と話す。

 曙覧は、頼まれて書を書くなど、歌人のほかに書家としても活動していた。このかるたがいつごろ書かれたものかは記録がなく、はっきりしたことは分かっていない。内田学芸員は「字体から若い時ではなく、40~50歳ごろではないか」と推測している。

 2月1日まで、館蔵品展「必見! 曙覧のかるた」で展示している。10日午後1時半からは展示解説(申し込み不要)がある。

 かるたのほか、上月久尾の3人の娘に贈った和歌短冊、40代前半に書いたと見られる和歌のびょうぶなども展示している。

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