加島祥造さんの遺作の展示作業が進む会場

加島祥造さんの遺作の展示作業が進む会場

長野県 伊那路 祭り・催し

加島祥造さん遺作展 墨彩画や詩文、伊那で10日から

信濃毎日新聞(2016年3月5日)

 詩人、墨彩画家、英米文学者でタオイズム(老荘思想)を研究、実践し、昨年末に92歳で死去した加島祥造さんの遺作展が10日、伊那市の画廊「はら美術」で始まる。駒ケ根市中沢の自宅「晩晴館」に残る墨彩画を中心に、加島さんの個展では最大級という約120点を展示。初期から晩年まで、「現代の文人」の全体像を伝える。

 加島さんは東京・神田の生まれ。戦後は「荒地(あれち)」派の詩人として活躍、信州大などで英米文学を教えた。25年ほど前に駒ケ根市へ移住し、独居。心象風景や自然を描き、独自に口語訳した老子の言葉や自らの詩文などを添えた。

 「伊那谷の美しさは、高峰と渓谷の両方を結合したところにある」(著書「伊那谷の老子」)。展示する山水画には、「山は空間を示し 水は時間を示している」「登るのは山があるからではない 山とひとつになりたいからだ」などと記されている。

 一輪挿しの花の絵には、「強くて大きなものは下にいて根の役をすべきだ しなやかで弱いものこそ上にいて花を咲かすのだ」と老子の一節がある。連なるつるし柿を描き、「大いなる光の智恵をたっぷり受けいれて熟したものたち」と記した作品も。漢詩や英詩の原文や訳、自作短歌を書いた作品も並べる。

 加島さんの長男裕吾さん(60)=駒ケ根市赤穂=は「昭和50年代に描き始めたころから最晩年まで全体を俯瞰(ふかん)できる。伊那谷のイメージが体に染み込んでくるまでの作風の変化が分かる」と話す。

 はら美術は2002年から加島さんの個展を手掛け、7回目。社長の原義美さん(73)は、今回初めて見た作品があるという。「加島さんしか語れない言葉で、含蓄がある。こんな絵を描く人はこれからまず出ないのではないか」と話していた。

 21日まで。16日休み。入場無料。問い合わせは同画廊(電話0265・74・0751)へ。

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