福井県越前市の人間国宝、岩野市兵衛さん(82)が漉(す)いた和紙を用いた「越前生漉(きずき)奉書・木版・美人画」展が5月9日まで、同市の卯立の工芸館で開かれている。喜多川歌麿や竹久夢二らの木版美人画が一堂に会し、画材としての越前和紙の魅力を発信している。
岩野さんの漉く、楮(こうぞ)100%を原料とした生漉奉書は、自然な風合いや表面の滑らかさが特徴。絵の具の発色を阻害せず、度重なるすりにも耐える強さも兼ね備えている。同館の中川智絵学芸員が「岩野さんの和紙だからこそできる鮮やかな美人画を見てほしい」と企画した。
展示されているのは、喜多川歌麿の「ビードロを吹く娘」や、美人画を多く残した竹久夢二らの作品42点。伊東深水の「深雪」は、頭巾をかぶった女性が雪の中で傘を差している様子を描いた作品。約70年前に刷られたとは思えないほど、頭巾の紫や着物の水色の発色が鮮やか。
版画で色を重ねていく過程を分かりやすく示したコーナーや、岩野さんが漉いた和紙に触ることができる展示もある。岩野さんは「越前和紙の質は全国的にも群を抜いている。その素晴らしさを感じてほしい」と話していた。
17日午後1時半から、会場で岩野さんのギャラリートークもある。予約不要で先着20人。参加無料だが、入館料(大人200円、小中学生100円)が必要。