松本市の国宝松本城を訪れる外国人観光客が近年、右肩上がりで増えている。松本城管理事務所がまとめた2015年度の速報値によると、有料入場者のうち外国人は前年度比9%増(8046人増)の9万3874人。同事務所は、政府のインバウンド(海外誘客)政策などに加え、フランスで発行されている観光ガイドブックで高く評価されたり、米国の旅行口コミサイトの日本法人による人気投票で上位にランクし続けたりしていることで、海外でも名前が浸透していることが背景にあるとみている。
晴れ間が広がった19日午前。松本城本丸庭園内では、多くの外国人観光客が、青空を背景にした天守を写真に収めていた。初来日した英国のデザイナーのローズ・メアーズさん(27)はガイドブックで松本城を知ったという。「武士が使っていた天守が昔のまま残っている歴史や、山を背にした風景が素晴らしい。天守の中も古くて良かった」と喜んでいた。
松本城は近年、特に欧米で知名度が高いという。フランスで09年に発行された観光ガイドブックの日本編「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で最高評価の三つ星を得た。その後の改訂版でも評価は継続している。また、米国の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の日本法人(東京)が毎年発表するランキング「行ってよかった!日本の城ランキング」でも、近年は10位以内に入っている。昨年8月発表の15年ランキングでは熊本城(熊本市)に次いで2位だった。
松本城の有料入場者のうち外国人数は、記録を取り始めた08年度に約2万4190人だったが、東日本大震災があった11年度を除き、右肩上がりで増加。16年度には10万人に届きそうな勢いだ。
国内の観光客も、戦国時代や城郭ブーム、NHK大河ドラマ「真田丸」放映など、さまざまな要因が絡み、外国人以上に増えている。
15年度の有料入場者と、イベント時の無料入場者を合わせた全入場者数は94万9430人と、前年度より5万6468人増えて過去10年で最多だった。松本城管理事務所の大竹永明所長は「特に欧米人観光客の伸びが大きく、評判が高まっている。これを機会に日本の近世城郭のさらなるイメージアップを図りたい。世界遺産登録への動きも活発になればいい」と期待している。