引目山麓の岩に彫られた摩崖仏。北陸道や浅水川を行き交う人々の安全を守り続けた=福井市

引目山麓の岩に彫られた摩崖仏。北陸道や浅水川を行き交う人々の安全を守り続けた=福井市

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風化もなお往来守る摩崖仏 愛郷心と地区の一体感育む

福井新聞(2016年5月23日)

 山肌に露出した岩をよく見ると、何かが彫り込まれた跡がある。しかし、それが蓮華(れんげ)座に立つ小柄な仏の姿であるとまでは、言われなければ分からないだろう。福井市清明地区の引目町、引目山麓にある「摩崖仏(まがいぶつ)」は、はるか昔から風雪に耐え、その身をすり削りながら、北陸道や浅水川を行き交う旅人、舟の安全を守り続けてきた。

 この付近を流れる浅水川(現・朝六ツ川)はかつて、蛇行を繰り返し、たびたび氾濫する暴れ川だった。北陸道も冠水し、旅人がよくこの地で長い間足止めされたといわれる。摩崖仏は制作年代こそ分からないが、この地で身動きが取れなくなった僧が、付近で起きた水難事故を悼んで彫ったと伝わっている。

 「子どもたちに愛郷心を養ってもらいたいから、歴史遺産を大切にするんです」と、清明公民館の坂川清館長(77)は言う。清明地区は1982年の発足で、歴史が比較的浅い。古くから地区にあるものを育むことで、地区の一体感につなげるという狙いだ。摩崖仏をはじめとする地区内の歴史遺産には、清明小児童による手描き看板のほか、いわれの書かれた石碑が建つ。創作民話劇もあるし、周辺の手入れも行き届いている。

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