越前海岸の景色に魅せられ10年前、東京から福井市鮎川町に移住した、檜(ひのき)三味線奏者で製作も手掛ける野村深山さん(70)が、海岸近くにある自身の工房を開放し、三味線の展示を始めた。演奏や製作を体験することもでき、「観光でふらっと寄り道できるスポットの一つになれば」と期待を込めている。
檜三味線は、胴に皮を張らず全体を檜で作った三味線で、野村さんが約20年前に考案した。東京を拠点にプロ奏者として活躍し、アジアやヨーロッパを中心に25カ国以上、国内では延べ550カ所を巡り、ライブを行ってきた。
還暦を機に同市に移住。自宅に工房を構え三味線教室を開いている。これまでは教室生しか出入りしていなかったが、移住から10年がたち、「お世話になっている地域の役に立てれば」と開放を決めた。
工房ではヒノキのほか、ブナやツバキなどの15種類の素材で作った18丁の三味線を展示。野村さんの指導で演奏が体験でき、素材ごとの音色の違いが比べられる。
野村さんの生演奏を聴くことも可能で、ジャズやシャンソン、歌謡曲など10のジャンルから1曲をリクエストできる。彫刻刀やノミを使った製作工程の一部体験もある。
「路線バスの車窓から眺める越前海岸の景色がお気に入り」と話す野村さん。工房は京福バスのバス停「鮎川新町」近くで、「近辺にはガラス工房やカフェなど観光スポットが点在している。気軽に立ち寄ってもらい、越前海岸の魅力を知るきっかけになれば」と話している。
京福バスで訪れた人には、野村さんが演奏する10曲を収録したCDアルバムのプレゼントがある。体験、見学は無料で、事前の予約が必要。