県西田幾多郎記念哲学館の特別展「禅―若き西田幾多郎の葛藤時代」は1日、かほく市の同館で始まった。同市出身の哲学者幾多郎が、親友の教育者山本良吉に宛てた書簡1通が初めて公開され、来館者が幾多郎の人柄や友情に思いをはせた。
特別展は哲学館と鈴木大拙館(金沢市)の交流協定締結5周年を記念して企画された。書簡は、幾多郎が県尋常中学校七尾分校の教師だった1896(明治29)年に出されている。結婚したばかりの幾多郎が「ファミリー・ライフ」を後悔しているとし、山本に「鬼窟」に陥らないよう諭している。幸せのあまり、哲学を究める気力が衰えることを恐れる心境がにじむ。
2人は旧制四高時代からの親友で、同級生の仏教哲学者大拙、国文学者藤岡作太郎と親交が深い。山本は北國新聞の創刊者赤羽萬次郎に知られ、創刊号に随想を寄せるなど多くの寄稿をした。東京・旧制武蔵高で校長を務めた。
書簡は、山本の遺族から幾多郎の遺族に渡り、旧西田記念館に寄託されていた。特別展には幾多郎が禅と向き合った時代を中心とした書や日記を含め25点が並んだ。来年3月26日まで。