記録的な暖冬で前季に利用客が落ち込んだ県内スキー場が、今季の開業に向けて集客強化策を打ち出している。利用ニーズに合わせた新コースの開設、人工降雪機の増強のほか、利用者に情報提供する専用アプリを導入するスキー場も。ハード、ソフトの両面の戦略で巻き返しを図る。
「前を滑る客を追い抜かない」「スピードを追求しない」。白馬八方尾根スキー場(北安曇郡白馬村)のリフトを運営する八方尾根開発(同)は一部コースで「100活ゲレンデ」ルールを導入する。
「100活」は、百歳まで生き生きと暮らすお年寄りの活躍を意味する造語。同スキー場は高齢の利用者も多い。ゲレンデ最上部に係員を配置し、ルールを説明しながら十分な間隔を空けて利用客を送り出す。秋元秀樹企画営業部部長は「けがが心配なお年寄りも伸び伸びとスキーを楽しめる」とする。
戸狩温泉スキー場(飯山市)は、標高約千メートルの最上部で4季ぶりに「新原生林コース」を復活する。周囲の景色が好評だったが、運営効率化で専用リフトは休止に。今季はリフトの代わりにスタッフが雪上車で1回500円で輸送し、ゲレンデの魅力を高める。雪上車の楽しみも味わえる。
斑尾高原スキー場(飯山市・新潟県妙高市境)は、木々の間を滑る「ツリーランコース」を1本新設し、3本に増やす。ツリーランは一般的に上級者向けだが、同スキー場は斜面が緩やか。「ファミリーアドベンチャー」コースと称し、家族連れを呼び込む。
白樺湖ロイヤルヒルスキー場(茅野市)は小型降雪機を21台導入し、計37台に増強した。昨季は12月上旬に開業したが、雪不足で一時停止。中山隆樹支配人は、昨冬の利用客は前季比2割弱減ったとし、「今季は減少分以上の集客増を目指す」と意気込む。
このほか、大北地域を中心とする約10スキー場は、ゲレンデ状況やスキー場での現在位置などを確認できる専用アプリ「yukiyama(ゆきやま)」を導入。情報提供の強化により集客力を高める。
アプリは全国のスキー場の情報を掲載。今季の使用に向けて神戸デジタル・ラボ(神戸市)が開発した。スキー場は、ウェブ管理画面で天候や積雪量について入力し、利用客はスマートフォンなどで情報を得る。契約したスキー場は、利用客の居住地、年齢層などについて情報提供を受けられ、マーケティングに活用できる。Hakuba47(白馬村)は、アプリ導入により若年層の取り込みを期待。担当の前田貴典さんは「業務効率化にもつながる」とする。
県観光部によると、県内スキー場84カ所の2015〜16年シーズンの利用者数は前季比16%減の約596万人。雪不足による営業期間の短縮のほか、北佐久郡軽井沢町で1月に発生したスキーツアーバスの転落事故も影響したとみられる。