台湾の生徒たちと一緒にお好み焼きを作る是石さん(左から2人目)=16日、伊那市平沢

台湾の生徒たちと一緒にお好み焼きを作る是石さん(左から2人目)=16日、伊那市平沢

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農家民泊、伊那は満杯 地域活性化へ...周知これから

信濃毎日新聞(2017年2月25日)

 旅行客を一般住宅で受け入れる「農家民泊」で、海外からの宿泊希望者が増え、伊那市で受け入れ先が不足している。2016年度は、15年度を千人ほど上回る約2500人が宿泊する見込み。そのうち1800人ほどが海外からで、現在は希望者の4分の1を断っている状況だ。民泊を進める市観光協会は、農家に協力を呼び掛けている。

 「washinghand(手を洗って)」。伊那市平沢の是石(これいし)里美さん(68)は今月16日、台湾の国立華僑高級中等学校(日本の高校に相当)の1年生4人を迎え、英語や日本語、身ぶりを交え、自宅内を案内した。家は築100年以上でまきストーブやいろりが並び、生徒たちは珍しそうにカメラを向けた。

 夕飯は地元産の野菜をたっぷり使ったお好み焼きやおにぎりなど。生徒たちは是石さんを「ママ」と呼んで打ち解け、お好み焼きの生地をひっくり返すなど手伝った。

 是石さんは次男と2人暮らしで、12年から民泊を受け入れる。日本人やアジアからの旅行者を中心に、1カ月に2、3組が滞在。一緒に夕飯を作り、翌日に野菜などの収穫体験をする1泊2日が一般的なスケジュールだ。是石さんは、タブレット端末に保存した宿泊者との記念写真を眺めながら、「これが生きがい。みんな孫のよう」と話す。

 市観光協会によると、利用者は徐々に増え、15年度は国内が465人、海外が1170人。市が友好提携する東京都新宿区の小学校や台湾の教育旅行などリピーターが多い。同協会は温かな田舎のもてなしなどが魅力と分析する。

 受け入れ先は42軒だが、高齢化などもあり、実際に利用者がいるのは30軒ほど。修学旅行生などは200人規模になるため、1軒当たり4人程度の宿泊を見込むと、安定して受け入れるには50軒ほどが必要になる。同協会事務局長の宮沢正己さんは「地域活性化が一番の目的で、過疎地が明るくなる」。一緒に農作業などをすることで、高齢者の励みにもなると話す。

 ただ、市民への周知はこれからだ。21日、市役所で農家民泊を検討している人を対象に説明会があり、協会担当者は「親戚の子どもが来た感覚で接して」とPR。受け入れを考える6組からは「(日中)勤めをしていても大丈夫か」といった質問が出た。

 同協会によると、利用者は1泊2食の半日農業体験で8200円ほどを協会に支払う。保険代など諸費用を引いた4千円ほどが受け入れ先の収入となる。旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可を得るには手続きに2万円ほどかかり、伊那市は書類手続きを手伝い、1万円を補助している。

 知人に勧められ、説明会に参加した60代女性は夫と2人暮らしといい、「うまく接することができるか不安もあるが、海外の人に会えるのはそれ以上の楽しみ」と前向きに検討していた。

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