昨年12月の新潟県糸魚川市の大火で全焼し、黒部市荻生の銀盤酒造で酒造りをしている老舗酒造会社、加賀の井酒造の関係者が30日、もろみから酒を搾る「上槽(じょうそう)」の作業を行った。原酒の状態を確かめた第18代蔵元、小林大祐取締役(35)は「糸魚川での酒造り再開につなげるためにも、環境が違う中でいい状態の酒ができた」と、酒造りの大きな節目を乗り越えた喜びを語った。
銀盤酒造の田中文悟社長(40)が加賀の井酒造の社長を兼務していることから、2月から加賀の井酒造の製造スタッフが銀盤酒造の設備を借りて酒造りを行ってきた。
この日は、もろみの状態を確認した後、専用の機械で搾り、ホースから出てきた生の原酒の味や香りを確かめた。
軟水の黒部の伏流水を使うため、硬水を使用する本来の「加賀の井」の味とは異なる。それでも小林取締役は「水の軟らかさが出たバランスのいい酒になった」と話した。
主に予約があった顧客向けに純米大吟醸を一升瓶で約1500~2千本分造る予定。今後は原酒を熟成させ、ろ過した上で、加熱殺菌処理して瓶詰めする。5月上旬までの出荷開始を目指す。
糸魚川市での酒造り再開に向けて、酒蔵の設計士が決まり、今年夏には着工するという。