鯖江市役所1階のエントランスホールで展示されている「奇跡の眼鏡」

鯖江市役所1階のエントランスホールで展示されている「奇跡の眼鏡」

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東日本大震災時「奇跡の眼鏡」鯖江市で展示

福井新聞(2017年8月17日)

 東日本大震災の被災時に持ち主の命を救った「奇跡の眼鏡」が31日まで、鯖江市役所で展示されている。福島県を中心に眼鏡店を営む内山義弘さん(47)=同県いわき市=が持ち主から譲り受け、鯖江市側に貸し出したもので「眼鏡が人の命を救うことがあるんだということを産地の職人たちに伝えたい」と多くの市民の目に触れることを期待している。

 地震発生時、持ち主だった男性はいわき市内の工場で働いており、地震によってはずれた高圧電線が顔面を直撃した。しかし、かけていた眼鏡のレンズが衝撃を受け止め、チタン製のフレームの芯に電流が流れたため、軽傷ですんだ。

 震災から約2カ月後、同じ商品を買い求めに来た男性から内山さんがこのエピソードを聞き感動。男性から譲り受け、会社の神棚に飾っている。眼鏡は福井市のメーカーが製造したものだが、復興支援として鯖江市のメーカーから別の眼鏡枠の提供を受けたことなどに感謝し、貸し出すことにした。

 眼鏡は電気が流れた衝撃で吹き飛んだためか片方のテンプルが外れている。レンズは中心部にひびが入っている上、焦げた跡があり、地震時の生々しい情景を今に伝えている。

 内山さんもいわき市内の自宅が津波で浸水したり、経営していた店舗が倒壊するなどの被害に遭った。被災後、「自分は眼鏡でしか役に立てない」との思いから、避難所で眼鏡が必要な被災者に配った。

 「眼鏡にも命があると本気で思っています」。今も大切に保管している奇跡の眼鏡を通して見えるのは眼鏡業界に身を置く内山さんの愛情と誇りだ。「職人が多くいる鯖江市にも眼鏡の可能性をぜひ知ってもらいたい」と、福島から遠く離れた産地の人たちと眼鏡の素晴らしさを改めて共有できればと願っている。

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