常設展示の目玉の一つになる菱田春草の代表作「菊慈童」。さまざまな作品が1年を通して楽しめそうだ

常設展示の目玉の一つになる菱田春草の代表作「菊慈童」。さまざまな作品が1年を通して楽しめそうだ

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菱田春草の作品、常設展示へ 飯田市美術博物館

信濃毎日新聞(2017年8月30日)

 飯田市出身の日本画家、菱田春草(1874〜1911年)作品を所蔵する市美術博物館は9月30日から、春草作品の常設展示を始める。春草作品は数が少なく、入れ替えも必要なため、これまでは通年展示が難しかった。近年、数百点に及ぶスケッチや下絵、未完成作品が遺族から同館に寄贈・寄託され、1989年の開館当初からの念願が実現する。

 同館は2002年に約3億円で購入した代表作「菊慈童(きくじどう)」など春草作品30点を所蔵、15点ほどの寄託を受けている。日本画は素材が傷みやすく、続けて展示できる期間は長くて1カ月半ほど。館内にある菱田春草記念室で作品を入れ替えながら年6回ほど企画展を開いてきたが、1年のうち4カ月ほどは作品を鑑賞できない期間があるという。

 転機は15年。特別展の準備で都内在住の春草の孫が自宅を整理したところ、春草が晩年に手掛けていた未完の大作「雨中美人」や、スケッチ、下絵が数多く見つかった。その後も未完成作品などの存在が分かり、大半が遺族から同館に寄贈・寄託された。

 これらを整理し、従来の所蔵作品と組み合わせることで通年展示が可能に。同館は9月30日から、「菊慈童」「春秋」「牧童」「夜桜」といった名作を約1カ月ごとに入れ替え、展示していく計画だ。総額約1100万円をかけ、未完成作品を表装したり、記念室を改修したりと、準備を進めている。

 11月3日から展示する未完成作品の中には、重要文化財「黒き猫」(永青文庫蔵)やその後描かれた「柿に猫」(個人蔵)によく似た絵もある。「未完成作を見ることで、春草がどんな手順で描いたかが分かり、現場の気配も感じられる」と市美術博物館学芸員の小島淳さん(47)。春草の家族への手紙や学生時代の記録など出身地ならではの資料も添えながら、魅力を紹介していく考えという。

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