屋根に上り、軒先で干し柿作りに精を出す原秀子さん

屋根に上り、軒先で干し柿作りに精を出す原秀子さん

長野県 伊那路 グルメ

ぶるっ「干し柿の季節だに」 阿智で鮮やか柿すだれ

信濃毎日新聞(2017年11月15日)

 軒先にぶら下がった柿すだれが、澄み切った青空に映える紅葉と、まるで競い合うかのように鮮やかに輝く。冷たい風がさっと通り抜ける。「寒さで背筋がぶるっとしたら、干し柿の季節だに」。原秀子さん(83)は、阿智村春日の自宅で今年も干し柿作りに精を出している。

 同村智里の横川集落で生まれ育った。山深い土地だが、炭焼きで生計を立てる「お金に困らない生活」。ただ、戦後の食糧難でとにかく食べる物がなかった。26歳の時に「(食べ物に困らない)百姓はいいで」と母の後押しを受け、見合いで三つ年下の道則さん(故人)と結婚した。

 裕福な生活を思い描いていたが、違った。長女が生まれるまでの4年間、農業の傍ら、家計を助けるために工事現場で働いた。朝7時半から夕方5時まで。男女関係なく、肩に材木などを担いで運んでいた。2人の子どもを授かってからも、田畑仕事や養蚕などと忙しかった。

 「作らなくてもいいけれど、作りたいの」。干し柿は自分で食べたり、知人に贈ったりするのが主。食べた人の喜ぶ顔が見たくて毎年手を動かすが、80歳を過ぎても若い頃と同じようにやろうとしてしまう。原さんの体調を心配する2人の娘から「やり過ぎよ」と怒られることもある。

 干し柿が終わると、春先まで農作業はなくなる。その間、体はゆっくりと休められるが、頭の中は「来年は畑で何を作ろうか」とわくわく感でいっぱい。日に日に水分が抜けていく柿の面倒を見ながら、冬の訪れを感じている。

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