江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎(1760〜1849年)を通じたインバウンド(海外誘客)を進めようと、北斎が滞在した小布施町の関係者らが国内外への情報発信を活発化させている。作品を収蔵する北斎館は1日、ホームページ(HP)をリニューアルし、全ページを英語で閲覧できるように。有志らが北斎関連本の出版支援で行っていたインターネットで資金を集める「クラウドファンディング」は目標金額を達成し、英訳版も作る見通しとなった。北斎は昨年の大英博物館での企画展開催などで国内外で関心が高まっており、流れを生かそうとの試みだ。
北斎館のHPでは、小布施の豪農商、高井鴻山が北斎を招いたことなど、小布施と北斎の関わりを紹介するページを新たに作成。高井鴻山記念館や、北斎が手掛けた天井絵のある岩松院など、一帯の観光地を示す地図も載せた。学芸員のブログも開始。収蔵作品の特徴などを紹介する。
学芸員の北沢瑞希さん(24)は「写真もたくさん使い、HPをより見やすくした。大英博物館での北斎展などで、北斎が世界から注目される流れがあり、これに乗って北斎館の魅力も国内外に発信したい」と意気込む。
町や、北斎の生誕地である東京・墨田区の有志によるプロジェクトチームのクラウドファンディングは、ノンフィクション作家、神山典士さんの取材や英訳本の作成費用などを募った。目標金額の300万円を上回る310万5千円が延べ364人から寄せられ、計画は実現する方向となった。事務局によると、今年の夏までに本の出版を予定。神山さんは既に、北斎と鴻山の関係などの取材で6回ほど町を訪れ、関係者に話を聞いたという。
プロジェクトチームは、北斎が晩年、墨田から小布施へと歩いたとされる約250キロの「北斎ロード」を巡る催しも計画する。事務局長の木下豊さん(59)=小布施町=は「北斎を求める外国人観光客に向け、文化的なインバウンドの足掛かりにしたい」と話している。