石川旅行の思い出が描かれたスケッチブック=金沢湯涌夢二館

石川旅行の思い出が描かれたスケッチブック=金沢湯涌夢二館

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金沢湯涌夢二館 石川旅行のスケッチ初公開

北國新聞(2020年8月6日)

 大正ロマンを代表する叙情画家竹久夢二が1917(大正6)年に石川県内を旅行した際の足取りを示すスケッチブックが8日、金沢市の金沢湯涌夢二館で初公開される。恋人の笠井彦乃、次男の不二彦と巡った兼六園や加賀温泉郷の風景が収められ、夢二が妻の岸たまき(金沢出身)との離縁後、新たな芸術的境地を求めた軌跡が克明に記された貴重な資料である。
 スケッチブックは全76ページで、8月12日から9月8日までの日付と金沢、山代、山中、片山津の地名が確認できる。
 これまで石川旅行は夢二のエッセーなどに記載されていたが、スケッチブックの内容からより詳細な足取りが浮かんできた。山中温泉のこおろぎ橋や兼六園の眺望台から卯辰山を望んだ風景画などが描かれ、後の発表作品の下絵も含まれている。
 交流のあった北國新聞記者で歌人の西出朝風(ちょうふう)の自宅を訪ねた記述のほか、別れた妻たまきの生家を探し歩いたが、結局見つけられなかったことなども記されている。
 同館の川瀬千尋学芸員は「恋人の彦乃と一緒に旅しながらも、たまきの名残を探そうとするなど、感傷的な様子もうかがえる」と指摘。彦乃をモデルに新たな美人画の作風を模索していた夢二にとって、創作の刺激を得た旅行だったのではないかと推測した。
 8日に始まる同館の企画展「夢二の目と手」で、スケッチブックをはじめ約50点が展示される。夢二が創作の参考にした西洋美術雑誌の写真の切り抜き、代表作の一つである「黒猫を抱く女」の元となった図版なども並ぶ。12月6日まで。川瀬学芸員は「夢二が何に感動し、どのようなイメージを生み出したのか、創作の過程を知ることができる貴重な資料。多くの人に訪れてほしい」と話した。
 金沢21世紀美術館で開かれている「培広庵(ばいこうあん)コレクション 美人画の雪月花」(北國新聞社、一般財団法人石川県芸術文化協会主催)では、夢二の屏風絵「投扇興(とうせんきょう)」も展示されている。

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