国の文化審議会(佐藤信会長)は20日、大聖寺藩や明治以降の国事業によって植栽された砂防林が残る「加賀海岸地域の海岸砂防林及(およ)び集落の文化的景観」(加賀市)を国重要文化的景観(重文景観)に選定するよう、萩生田光一文部科学相に答申した。
加賀海岸の選定地は、加賀市西部の日本海と大聖寺川に挟まれた1360ヘクタールの区域となる。海岸砂丘ができやすい自然条件のもとで飛砂(ひさ)から集落や耕地を保護するため、近世以降に植栽された海岸砂防林が今でも見られるのが特徴となる。
砂防林により、かつて一面の砂丘だった海岸には、全国屈指の海浜植物群落が形成されている。飛砂被害が抑えられたことで農業など集落の営みが安定し、海浜、砂防林、集落、水田、河川が連なる文化的景観が広がっている。
砂防林築造の際に用いられた旧作業道や、国指定天然記念物「鹿島の森」、石川県指定天然記念物「片野鴨池」、北前船主の寄付で建設された旧瀬越小の校舎(現竹の浦館)などが景観の重要な構成要素と位置付けられている。
答申を受け、加賀市の宮元陸市長は「先人の遺産である景観を守るのは意義あることであり、市としても予算措置をしていく」と保全活用に意欲をみせた。
答申通り選定されれば、県内の重文景観は「金沢の文化的景観 城下町の伝統と文化」「大沢・上大沢の間垣(まがき)集落景観」(輪島市)に次いで3件目となる。