福井県若狭町の特産品「熊川葛(くず)」を伝統的な製法で生産している熊川葛振興会が2月12日、同町西田地区の山奥でクズの根を採取した。大きく育った根を2時間以上かけて丁寧に掘り出した。
熊川葛は、つる性の植物クズの根を粉砕してでんぷんを絞り出して作る。同会は町内のクズのみを使っている。でんぷんを多く取り出すためには20~30年育ったものが必要で、気温が高いと根のでんぷんが発酵するため、冬場に掘り出している。
同会の西野徳三会長(75)や町職員ら4人が手分けし、ツルを頼りにスコップやつるはしで掘削。下にいくほど太くなる根に苦戦しながら、重さ約30キロ、太さ約60センチの"大物"などを掘り出していた。切断した断面から白いでんぷんがにじみ、西野会長は「良い葛ができそう」と笑顔で汗をぬぐっていた。
根から生産できる葛の量は、重さにしてわずか5%で、この日収穫した150キロから7キロほどの熊川葛ができるという。西野会長は「重労働で大変だが、完成したときの喜びはひとしお。これからも伝統を守りたい」と話していた。生産は4月上旬まで続く。