かつて北前船の寄港地として栄え、今も古い町並みが残る福井県坂井市三国町の四の部地区に、住民や観光客の交流施設「出村北前茶屋」が4月25日オープンする。住民グループが築100年の空き家を改修し、幅広い世代に憩いの場を提供する。開店に先立ち11日、お披露目会があり新たな船出を祝った。
江戸から明治期に三国湊の花街としてにぎわった「滝谷出村」。細い路地が入り組み風情ある趣が今に伝わる。ただ、地区(約420世帯)の高齢化率は約35%と高くなっている。
福祉団体「ひまわりネットワーク四の部」が2019年に住民アンケートを実施し、「憩いの場、集う場所がほしい」との声が多いことが分かった。
高齢者らが生き生きと暮らせる地区をつくろうと、福祉委員を務めていた女性らを中心に有志が集まり、昨年7月に「NPO出村みらいプロジェクト」を立ち上げた。
空き家は大正12年(1923年)に建築された木造2階建てで、長年酒屋として使われていた。県と市の補助金を活用し、太い柱や梁(はり)が見えるように改修した。
1階はカフェスペース(約55平方メートル)で、2階は展示スペース。2階の窓からは三国祭で街を練り歩く山車(やま)が間近に見える。
当面は毎週火、金曜の営業。ボランティアスタッフ13人で運営する。オリジナルコーヒーやジュースなど飲み物は200円、ケーキやぜんざいは300円で提供。日替わりメニューとして、サバが入った「北前カレー」、甘エビが入ったかき揚げそばなど工夫を凝らした料理でもてなす。総菜や地元の野菜も販売する予定。
11日、地元住民らにお披露目会を開き、完成したばかりの茶屋を見てもらった。プロジェクト代表は「地域の人たちに気軽に立ち寄って、コミュニケーションの場に使ってほしい。湊町を散策してゆっくり休憩していただければ」と話している。