創業65年を迎えた小松市土居原町の中華料理店「清(せい)ちゃん」が29日、最後の営業日を迎えた。閉店が決まって以降、同店発祥の小松のご当地グルメ「塩焼きそば」などを食べ納めしようと大勢の人が店を訪れ、最後の1週間は45組限定となっていた。最終日も営業が始まる前から多くの人が列をつくり、思い出の味を堪能し、店に別れを告げた。
閉店を知った大勢の人が連日訪れたことを受け、店側は高輪清(たかなわきよし)店主(90)の体調を考慮し、1週間前から午前11時半からの昼の部、午後5時からの夜の部とも入店は各45組限定とする対応を取った。店前には「45名限定」と記した張り紙を掲げ、整理券を配った。
最終日も多くの人が開店前から列をつくった。午前7時半から並んだという山口俊一郎さん(79)=同市岩上町=は「昨日は行列で食べられなかったので、今日は早く来ようと思った。昔ながらの店がなくなるのは寂しい」と残念がった。
限定45組に間に合わず、食べ損ねた人も見られた。休暇で帰省中だった医療従事者の男性(77)=東京=は昼に訪れたが、整理券の配布が終わった後だった。夕方の飛行機で帰京することになっていたため、諦めざるを得なかったという。
男性は「清ちゃんに来ることも帰省の目的の一つだったので残念。思い出の味だったので食べたかった」と話した。
客によると、店内にはこれまで使ってきた食器を有効活用してほしいと、皿や丼などを持ち帰ることができるブースが設けられた。店の思い出にしようと手にする人もいた。
店は当初、閉店を知らせる張り紙を掲示する予定だったが、混雑を受けて取りやめた。店のスタッフは訪れた客一人一人に「今までありがとうございました」と声を掛け続けた。
清ちゃんは1956(昭和31)年、高輪店主がギョーザと焼き鳥を出す屋台を構えたのが始まりで、北陸地区の中華料理店の草分けとして地域住民に愛された。高輪店主が高齢となったことを受けて閉店を決断した。