13日から始まる公演に向けてゲネプロに臨む仲代さん=七尾市の能登演劇堂

13日から始まる公演に向けてゲネプロに臨む仲代さん=七尾市の能登演劇堂

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無名塾公演 仲代さん「ただいま」

北國新聞(2021年11月13日)

 13日から七尾市の能登演劇堂で始まる劇団「無名塾」の公演「左の腕」(北國新聞社後援)で主演を務める仲代達矢さん(88)が12日、北國新聞社などのインタビューに応じた。東京生まれで能登を「第2のふるさと」と呼ぶ仲代さんは「ただいま」と笑顔をのぞかせ、2年ぶりとなる能登での上演に意欲を示した。かつての無法者が罪を隠しながら生きていく作品について「不寛容の時代をどう生きるか。現代に通じる」と見どころを語った。

 ―2年ぶりの能登演劇堂での公演となる。

 全員で「ただいま」と言わせていただきたい。本当にいいところだなあ、ふるさとに帰ってきたという思いだ。顔なじみの方に「どう?じじいになったか」と聞いてみたい(笑)

 ―13日に幕が上がる。

 昨年は朗読劇「人間失格」が中止となり、困惑した。だが、演劇人はコロナと戦いながら作品をつくり続けなければいけない。無名塾の公演は毎年、能登演劇堂がスタートだ。その初日を控え、ある意味、興奮状態でいる。

 ―役者70年の節目を迎えた。

 よくもまあ70年も(笑)。運が良く、大病もせずここまでこられた。映画、映像の世界にどっぷりと漬かろうかと思ったこともあるが、演劇をしたくて役者を志した。役者の力で観客に訴えられるのが演劇。だから70年続けられた。

 ―コロナ禍の影響は。

 芝居ができなくなったが「この役をやりたい」と思っても話がないと出られないのが役者。待つことも役者の商売だと気付き「じゃあ次を待とうか」と思えるようになった。

 ―「左の腕」を選んだ理由は。

 原作の松本清張先生の大ファンで、テレビで何本かやったし、先生と共演もした。「左の腕」は前進座の大先輩、中村翫右衛門さんがやられ、評判だった。僕は翫右衛門さんが大好きで、これと決めた。

 ―見どころは。

 主人公の卯助はかつての無法者。立ち直り、いいじいさんになっているが、犯した罪がずいぶんと付きまとう。不寛容の世を、罪を犯した人間がどう生きるのかが「左の腕」に書かれている。今の世の中も不寛容の時代だと感じており、卯助を演じることに興味をそそられた。

 それと私は昭和7(1932)年生まれで、兵隊にこそ行かなかったが、戦争体験者だ。考えると、不寛容な時代だから戦争が起きるのではないか。平和でなきゃいけないという思いが90歳にならんとする私の中にある。「左の腕」にもそのテーマがあると思う。

 ―今後の役者人生は。

 引退とは申しませんが、「隠居の世界」に入るのかな。ただ舞台俳優はアスリート的な部分がある。一に声、二に動き、三に姿と教わり、いまだに「この役はどういう声を出したらいいか」と考える。最高の劇場、能登演劇堂でお客さんに伝えることができれば「まだ(自分も)ちゃんとしているな」と思える。

 ◎本番へ最終調整 28日まで13公演

 12日は「左の腕」のゲネプロ(通し稽古)が行われ、仲代さんらが舞台の流れなどを最終確認した。江戸・深川の料理店を舞台に、仲代さんは左腕に布を巻き、過去の罪を隠して生きる老人を演じる。

 28日まで13公演。チケットは全席指定で一般前売り8千円、高校生以下5千円(当日はともに500円増)。問い合わせは能登演劇堂まで。

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