セットで譲り受けた地獄極楽図(左)と専称寺本を並べた常設展=立山博物館

セットで譲り受けた地獄極楽図(左)と専称寺本を並べた常設展=立山博物館

富山県 黒部・宇奈月・新川

謎の「地獄極楽図」公開 立山博物館の常設展

北日本新聞(2022年7月4日)

 立山博物館(立山町芦峅寺)の常設展に「一緒に譲り受けた」とだけ紹介されている絵図がある。6月中旬の展示替えに合わせ、初めて公開された2幅一対の「地獄極楽図」だ。3幅対の立山曼荼羅(まんだら)と一緒に譲り受けたが、互いの関係性は不明。博物館が手掛かりを探っている。

 地獄極楽図は、地獄と極楽の様子が一幅ずつ描かれている。博物館によると、射水市にある専称寺(せんしょうじ)から2019年、国重要有形民俗文化財の立山曼荼羅「専称寺本」と一緒に寄贈された。亡くなった寺の先代住職が知人から譲り受け、法要で5幅を一緒に掛けていたこと以外、詳細ははっきりしていない。

 専称寺本には、岩峅寺延命院所蔵の立山曼荼羅の絵解き台本「立山手引草」に登場する場面が描かれている。このため、立山信仰の拠点の一つ、岩峅寺の宿坊に関係するのではないかと考えられている。

 一方、地獄極楽図と立山曼荼羅は5幅でセットなのかどうか分かっていない。国重要有形民俗文化財「立山信仰用具」の対象が2020年に追加された際、地獄極楽図は外れた。宿坊が布教で使ったのか、仏教画コレクターの元でセットになったのかなど、さまざまな可能性が考えられるという。

 細木ひとみ学芸課係長は「専称寺本と地獄極楽図から受ける絵の印象は異なる」としつつ、寄贈の経緯を踏まえ、並べて展示することにしたと説明。「裏書きもないため、持ち主を専称寺以前にさかのぼれない」と話し、引き続き、由来などを調べる予定だ。

 展示は8月21日まで。6月の展示替えでは、立山開山伝説に由来し、胸に傷をつけた「矢疵(やきず)阿弥陀如来像」も新たに常設展に加えている。

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