好評のモヒートを出す間宮さん

好評のモヒートを出す間宮さん

富山県 富山・八尾

85歳バーテンダー、27ヵ国での経験生かす

北日本新聞(2022年7月6日)

 富山市桜木町のバー「mi padre(ミ・パドレ)」で、85歳のバーテンダー・間宮慎さん=同市泉町=がカウンターに立っている。初めて店主を務める店は、離婚した亡き妻が間宮さんの将来を託した長男からの贈り物。バーテンダーを続け65年、27カ国で働いた経験を生かし、客に安らぎをもたらしている。

 間宮さんは神戸市生まれ。20歳のころに市内のバーを手伝い、バーテンダーとしてスタートした。神戸を離れて各地で経験を積み、20代後半には富山市でも働いた。30代前半で海外に渡り、東南アジア、欧州、中南米のホテルやリゾート地などで技術を磨いた。

 富山市にいた頃、故泰子さんと結婚し、長男の松井庫(まもる)さん(55)=同市=が生まれた。単身で海外を転々とするうちに離婚。64歳で亡くなった泰子さんは、間宮さんに「息子とは絶対に会わないでください」と告げる一方、松井さんに「私がいなくなったら、あなたが面倒見なくてはいけない」と言い残した。

 60歳前半になってメキシコから帰国した間宮さんは富山市で再び働き始めたが、勤めていた店が閉店して行き場を失った。エアブラシペインターとして活躍する松井さんは2009年、父の世話を頼んだ母の言葉を思い出し「今がその時かもしれない」と、間宮さんのために新しい店を準備。店名はスペイン語で「私の父」にした。

 間宮さんは、72歳で初めて自分の店を持つことになった。「すてきな店で、すてきな名前。感激した」と松井さんに感謝。多くの人から「普通ならやめる年齢」と言われたが、既に10年以上たつ。

 「清潔感が最も大切」と言い、客に不快感を与えないよう心掛ける。親しくなっても敬語を使い、砕けすぎない。「姿勢が崩れたら終わり」と日頃から水泳で体を鍛え、背筋が伸びた立ち姿はよく感心される。客に居心地のいい時間を与えようと、高いプロ意識を持ち続ける。

 ミントが入ったラムベースのカクテル「モヒート」は清涼感たっぷりで、近くの店が客に薦めたことがあるほどだ。新型コロナウイルスの影響で客は減ったが、1杯を求めて来る人は途切れない。「カウンターで死ぬのが本望。できる限り店に立ち続けたい」と笑顔を見せた。

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