全長5メートルものジンベエザメの作品、動物のお尻がモチーフとなった作品―。薄く剥がされた段ボールが幾重にも貼り重ねられ、木彫りのような、粘土のような不思議な質感を放つ。段ボールを材料にした造形作家の玉田多紀さんの作品を集めた企画展「呼吸するダンボール」(福井新聞社共催)が7月2日、あわら市の金津創作の森美術館で開幕する。
玉田さんは兵庫県生まれ。多摩美術大で絵画を学んでいた3年時、素材としての段ボールに出合った。手に入れやすく、加工しやすい段ボールは、色や材質、硬さもさまざま。制作では、もんだり、つぶしたりして柔らかく"なめした"段ボールで土台をつくる。その上で、水に浸した段ボールの表面と裏面を剥ぎ取って"三枚におろし"たものを貼り付け、肉付けし、段ボールに「命を吹き込んでいく」(玉田さん)。
モチーフは、玉田さんの共感の対象である陸や海の生き物。そこに玉田さんの制作の原動力というフラストレーションが加わる。「私の作品はメッセージ性が強い物ばかり」と玉田さん。妊娠、出産を経て感じたジェンダーギャップ。母親の強さを感じさせる恐竜にひかれモチーフにした。絶滅危惧種の動物たちの作品には、絶滅に向かう命に思いをはせ、人間のエゴや無力さを込めた。生き物の皮膚は茶色の層が重なり、継ぎはぎの跡が残る。「この跡を見て、アナログな作り手の息づかいを感じてもらい、作品に込めたパワーも伝われば」と話す。
企画展では「森を探検していたら、ばったり生き物に遭遇する感じ」(玉田さん)にしたいという。内部に人が入れるものや、寝そべることができるものを含め約80点を展示。作品の作り方を紹介するコーナーもある。「来場者に『段ボールで何かをつくりたい』と思わせたい」と意気込む。
会期は8月28日まで(7月18日と8月15日を除く月曜と7月19日休館)。一般800円、中学・高校生600円、小学生400円。65歳以上と障害者は半額、未就学児と障害者の介助者は無料。
開幕日には玉田さんによる作品解説がある(無料)。問い合わせは金津創作の森美術館=電話0776(73)7800。
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