厳かな舞や謡などで施設の最後を飾った記念能楽大会=29日、福井市の福井能楽堂

厳かな舞や謡などで施設の最後を飾った記念能楽大会=29日、福井市の福井能楽堂

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福井駅西再開発ビルへ解体移築 能楽堂惜しみ厳か舞

福井新聞(2015年4月30日)

 JR福井駅西口再開発ビル「ハピリン」へ解体移築される、福井市民福祉会館の福井能楽堂で29日、40年余りの歴史の最後を飾る「さよなら記念能楽大会」が開かれた。愛好家が名残を惜しみながら謡(うたい)や舞を厳かに披露し、長年親しんできた施設に別れを告げた。

 同能楽堂は1973年、同会館4階に開設された。能舞台や楽屋を備え、収容人数は314人。当時は全国の地方都市でも本格的な能楽堂は珍しく、市内外の多くの愛好家が発表やけいこを重ねて交流を深めてきた。近年は年間延べ約1万人が利用している。

 閉鎖を翌日に控えた記念大会は、創立から30年にわたり同能楽堂を拠点に活動してきた福井市宝生会が、毎年6月の春季大会を前倒しして企画。会員や小中高生の出演者約40人が41番組を用意し、例年の倍の規模で開かれた。

 能楽歴のほとんどを同能楽堂で過ごしたという市内の70代女性は「本当に寂しい思い。気持ちを込めて演じたい」と舞台に向かった。出演者それぞれが終幕に花を添えようと、特に思い入れの強い演目を披露した。新しい門出を祝う「高砂」の舞囃子(ばやし)なども演じられた。

 舞台の合間に開いた総会では、坂手一成副会長が「駅前に舞台が移るのが待ち遠しい。皆さんとぜひはつらつと再会したい」とあいさつ。終了後は、出演者が感謝を込め、舞台や楽屋の汚れを丁寧にぞうきんでふき取った。石田齊保(ときほ)会長は「愛好者の技量を高めるのに貢献してきた施設で、非常にお世話になった」と感慨に浸っていた。

 西口再開発ビルは来年3月末に完成。3~4階の多目的ホールに現在の能舞台や老松が描かれた鏡板を再活用して整備する。福井市宝生会などは完成までの間、市民福祉会館の会議室やホールを代用することにしている。

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