伊那市などの飲食店でつくる「伊那ローメンズクラブ」加盟の約30店は4日、伊那名物ローメンを1皿400円の割引価格で提供した。使用する蒸し麺の語呂で「ローメンの日」としている6月4日の恒例企画。故伊藤和弌(わいち)さんらがローメンを考案したとされる1955(昭和30)年から60周年の節目の年でもあり、客は伝統の味をかみしめた。
加盟する「萬里(ばんり)本店」(伊那市)グループ代表で伊藤さんの義理の息子、馬場元(はじめ)さん(58)によると、当時は冷蔵庫が普及していなかったが、蒸し麺は日持ちがした。羊毛関連の産業が盛んだった伊那地方では羊肉も安く手に入ったという。
馬場さんは「ローメンがここまで普及してうれしい」としつつ、「先代から引き継いだ当時の味付けを変えるわけにはいかない」。萬里本店がある市中心市街地の入舟交差点脇には、「ローメン誕生の地」の記念碑が立つ。
4日の昼、南箕輪村の中村彦門(ひこと)さん(67)は家族で萬里本店を訪れ、羊肉、キャベツ、キクラゲが入ったローメンを注文した。ビールグラスを手に「ここで食べるのが習慣。ローメンは麺がのびないから、飲みながら食べられるのがいい」。幼時から同店でローメンを食べているという長女の平賀友紀さん(39)=伊那市西箕輪=は「自分でお酢などを入れて味付けできる。毎回新鮮な味」と話した。
同クラブによると、ローメンの日は各店とも通常よりにぎわう。さいたま市にも伊那市で「修業」した加盟店があり、この日はローメンを400円で提供したという。