里山活性化へ期待は"本物"―。秋の代表的味覚マツタケに形や食感がよく似た「サマツ(ニセマツタケ)」の人工栽培技術の開発に、福井県総合グリーンセンター(坂井市丸岡町)が取り組んでいる。実用化できれば新たな県産ブランドのキノコになるだけでなく、共生する広葉樹林の活用、山村の振興につながる可能性を秘めている。
マツタケは、共生するアカマツ林が松食い虫の被害を受けるなどして、国内生産量が年々減少している。中国産など輸入物に頼っているのが現状で、同センターを含め全国の研究機関が人工栽培に長年挑戦しているが、技術的に難しく成功例はまだない。
同センターは、マツタケに近い種の中でも香りの弱さを除けば最も似ているといわれ、熱を加えると風味が増すサマツに注目した。市場に出回るのはごくわずかで、ヒラタケなどと比べると5倍ほどの価格になる。県内に多い広葉樹林に生え、長期的な生産も望めるという。
2014年度に始まった研究は4年計画。初年度はサマツが生えやすい環境や温度など条件の解明、菌糸の培養に着手した。小浜市と、おおい町の広葉樹林で調査した結果、山の尾根付近でよく見られ、地表から15センチの平均地温が約20度の時期に、共生する広葉樹の周囲5~10メートルに円か半円状に生えることなどが分かった。嶺南ではスダジイ、嶺北ではコナラと共生している例が多いとみられる。
本年度以降、サマツの菌糸を付けた広葉樹の苗木を植えたり、広葉樹の根に菌床を埋め込んだりして、実際に人工栽培できるかどうかの検討を進める。また、イオンビームによる突然変異を利用し、より成長が速く、菌糸が付きやすいように品種改良する研究にも今後取り組む。
同センター林業試験部森林育成・特産研究グループの広瀬直人主任研究員は、マツタケの生産量が減っている要因として、アカマツ林が手入れされずに木が大きくなりすぎたり、落ち葉で土の状態が変わったりしたことを挙げる。「まきや炭の材料として利用した名残から、県内の里山には広葉樹が比較的多い。食の安全安心の面から自然に近い環境での栽培自体が価値になる。広葉樹林を荒れさせないためにも、課題は多いが何とか成功させたい」と意気込んでいる。