田上町の湯田上温泉旅館協同組合が、第18回「人に優しい地域の宿づくり賞」(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会主催)の、全旅連シルバースター部会長賞に選ばれた。乳がん患者に気兼ねなく温泉を楽しんでもらおうと、手術で胸に傷がある人のために入浴着を貸し出したり、温泉を貸し切りにしたりする取り組みが評価された。
人に優しい地域の宿づくり賞は、高齢者や障害者に配慮し、すべての人が楽しめる環境づくりに貢献した旅館や組合などに贈られる。毎年選考があり、ことしは全国から34件の応募があった。全旅連シルバースター部会長賞は、厚生労働大臣賞、全旅連会長賞に次ぐ賞だ。
湯田上温泉にある4軒の旅館は、2011年から県三条地域振興局と連携し、乳がん患者が安心して温泉を楽しめる「ピンクリボンほっと語らい温泉街づくり」に取り組んできた。手術の傷痕を隠せる入浴着を独自で開発して利用者に貸し出したり、貸し切りで人目を気にせず入浴できる時間を設けたりしている。
同賞では、湯田上温泉の取り組みが、県内外にも波及している点などを高く評価した。
取り組みの中心となった旅館「末広館」のおかみ、細井久美子さん(54)は元看護師。「乳がんは若い人にも多く、傷痕を人に見せることに抵抗がある人が多い。気兼ねなく温泉に入って心身に受けたダメージを癒やしてほしい」と言う。
受け入れる側も知識を持とうと、湯田上温泉では乳がん患者の体験談を聞く従業員向けの講習会を開いた。がんの早期発見につながる啓発活動にも力を入れ、女湯のシャワーに乳がんのセルフチェックの仕方を示したカードを備え付けている。
細井さんは「湯田上温泉から始まった取り組みは、徐々に広がってきている。受賞をきっかけに多くの人に取り組みについて知ってもらい、乳がん患者の方に宿を利用してもらいたい」と話した。
人に優しい地域の宿づくり賞では、村上市の旅館「大清」も努力賞に選ばれた。