高森町牛牧の農業、木村重臣さん(65)は、中国原産の果実「サンザシ」を使った清涼飲料水の販売を約15年ぶりに再開した。例年秋ごろに生食用に果実の販売をしており、中国では一般的な果物で中国帰国者には「故郷の味」として親しまれてきた。ここ数年、販売量が増えてきたため、約130本を生産し、11月末に再販に踏み切った。来年1月以降、ジャムの販売も計画している。
サンザシはバラ科の樹木。春には梅に似た1センチほどの小さな白い花を咲かせ、9〜10月ごろには直径2、3センチほどの赤い実を付ける。果肉の味は酸味が強く甘さは控えめ。木村さんによると、漢方薬として重用され、整腸などの効能があるという。
サンザシの果汁を使った飲料は約15年前に販売を開始。県などが主催する「信州の味コンクール」の最優秀賞にも輝いたが、売り上げが伸び悩み1年余りで販売をやめた。前回は果肉入りで日がたつと変色してしまったが、ろ過をするなど改良し、鮮やかなルビー色を保つようにした。味はさわやかな甘さとほのかな酸味が特徴だ。
木村さんは1990年ごろ、「日中友好交流の会」(事務局・横浜)の会員として中国を訪問した際にサンザシの存在を知り、帰国後にほかの会員とともに栽培に着手。中国では栽培が盛んで野生もしているため、本格的な販売を始めると中国帰国者を中心に口コミで広がった。「実がなっている光景を見たり、実を食べたりしては『懐かしい』と本当に喜んでくれた」と木村さんもうれしそうに振り返る。今は50アールの畑に4品種計約600株を育てている。
25年以上中国との交流事業を続け、留学生の受け入れなどをしている木村さん。「自分にとってサンザシは中国との交流のシンボル」と語る。畑で交配して偶然生まれた新品種の栽培にも取り組むなど、サンザシへの情熱はまだまだ尽きない。
720ミリリットルで税込み1300円。町内の「旬彩館」(出原)、「あんしん市場」(牛牧)の両直売所で販売している。