三国での舟遊びの思い出を描いた挿絵(金沢湯涌夢二館提供)

三国での舟遊びの思い出を描いた挿絵(金沢湯涌夢二館提供)

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竹久夢二が描いた三国の思い出 企画展16日開幕、福井市美術館

福井新聞(2016年7月15日)

 大正期の人気画家、竹久夢二が、1917年に三国(現福井県坂井市)を訪れ舟遊びした思い出を描いた本の挿絵が、福井市美術館で16日に開幕する企画展「竹久夢二展~大正ロマン・時代を彩った女性たち~」(同実行委=福井市美術館、福井新聞社、福井テレビ主催)で公開される。最愛の恋人、笠井彦乃とのひとときを、彦乃に寄せた恋歌集に残した作品で、本と挿絵のパネルで展示する。

 挿絵はペン画で、彦乃へ寄せた恋歌集「山へよする」(19年発刊)に収められていた。うろこ雲の下、帆掛け舟で三国沖にこぎ出した夢二と隣にほほえむ彦乃、膝の間に寝そべる前妻との次男不二彦が描かれている。枠外に「MIKUNI」と記載がある。

 夢二と彦乃、不二彦は17年8月11日から66日間、北陸を旅しており、山中温泉、片山津温泉、金沢に続き同29日に三国港を訪れた。舟遊びの絵はこの時の様子を描いたとみられる。

 恋多き男だった夢二は、愛憎のもつれから同年、東京を逃れた。溺愛していた次男を連れて京都に家を借り6月、ひそかに交際していた彦乃を呼び寄せた。北陸の旅は、いわば新婚旅行だったらしい。

 残っている書簡によると、夢二はすぐ金沢に戻る予定だったが不二彦が発熱し芦原温泉に滞在。同31日に戻った。回復を待って訪れた湯涌温泉で、夢二は彦乃に既婚女性の髪形である丸まげを結わせ、記念写真を撮っている。

 翌18年、2人の仲は彦乃の父によって引き裂かれ、失意の中で「山へよする」を発刊した。再会できぬまま若くして亡くなった彦乃を、夢二は晩年まで思い続けたという。

 福井市美術館の河野泰久学芸員は「夢二にとって、彦乃との北陸旅行は人生最高の時間だった。三国での幸せな思い出を回想しながら描いたのだろう」と話している。

 「竹久夢二展」は福井県で22年ぶりの大規模展で、貴重な肉筆の美人画や晩年に訪れた欧米でのスケッチ、楽譜の表紙や本の装丁、版画など計約230点を紹介する。

 会期は8月28日まで(7月19、25、8月1、8、22日休館)。一般千円、高校・大学生700円、小・中学生500円。前売り券(一般のみ800円)発売は15日まで。問い合わせは同美術館=電話0776(33)2990。

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