芳春院の秋吉住職が趣向を凝らした濃茶席=金沢市の宝円寺

芳春院の秋吉住職が趣向を凝らした濃茶席=金沢市の宝円寺

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百万石の母しのび一服 加賀・梅鉢茶会、まつ没後400年

北國新聞(2017年5月29日)

 加賀藩ゆかりの会場で茶の湯に親しむ会員制茶会「加賀・梅鉢茶会」(北國新聞社主催)は28日、藩祖前田利家の正室・まつの没後400年に合わせ、前田家菩提寺(ぼだいじ)の宝円寺(金沢市宝町)で開かれた。石川県内外から訪れた愛好家は、加賀藩の繁栄が育んだ茶道文化や美意識を通して、藩祖と共にその礎を築いた「百万石の母」をしのんだ。
 濃茶席はまつが創建した大徳寺芳春院(京都市)の秋吉則州(そくしゅう)住職が席主を務めた。床には、11代藩主治(はる)脩(なが)が「芳春院」としたためた大横物を掛け、梅鉢紋の入った台子(だいす)に大樋焼の茶道具一式、加賀蒔絵の茶器など、芳春院へ奉納された加賀名工の名品を合わせた。
 秋吉住職は武家茶道の一つ、石州(せきしゅう)流の茶人でもある。風格ある井戸茶碗(ちゃわん)や、文化勲章受章者の大樋陶冶斎(とうやさい)さんと共同制作した茶碗などでもてなし、参加者は茶を点(た)てる無駄のない清楚(せいそ)な所作にじっくり見入った。
 大樋さんは「まつ400年の機会がなければできない席だった。歴史はお茶で現代までつながっている」と話した。
 薄茶席は九谷焼作家の北村隆さん(小松市)が担当し、まつが帰依した大徳寺百十一世春屋宗園(しゅんおくそうえん)と、まつの描いた達磨(だるま)絵の軸が掛けられた。菓子器として「古九谷」から、春日山、吉田屋、小野窯など、江戸初期から明治までの7器が用いられ、参加者が九谷の歩んだ歴史に触れた。
 長野県上田市から訪れた倉沢芳枝さん(69)は「新緑の庭と鳥のさえずりと共に、素晴らしいお道具に出合えた」と感激した様子で話した。点心席は銭屋(金沢市)が担当した。
 次回は9月24日、羽咋市の日蓮(にちれん)宗本山妙成寺(みょうじょうじ)で開く。濃茶席は、加賀藩御用釜師の伝統を受け継ぐ宮﨑寒雉庵(かんちあん)さん(北國文化賞受賞者)、薄茶席は茶道裏千家名誉師範で淡交会富山支部の井上宗朋(そうほう)さんが席主となる。問い合わせは北國新聞社事業局内「加賀・梅鉢茶会」事務局=076(260)3581=まで。

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