金賞になったシードル(左)を前に今後の抱負を話す入倉さん

金賞になったシードル(左)を前に今後の抱負を話す入倉さん

長野県 伊那路

伊那のリンゴで高評価 参入1年「カモシカシードル醸造所」

信濃毎日新聞(2017年9月12日)

 異業種から参入し、リンゴの発泡酒「シードル」を造り始めてまだ1年足らずの「カモシカシードル醸造所」(伊那市横山)が、海外メーカーも参加した8月のコンテストで国内唯一の金賞を受賞した。地元産にこだわった酒造りが高く評価され、同醸造所に買いに来る外国人のファンがいるほど。所長の入倉浩平さん(37)は、本場欧州のコンテストへの出品を目指している。

 同醸造所は、父親の哲郎さんが社長を務め、東京で高齢者のグループホームを展開する企業グルップボエンデが経営。入倉さんは、祖母が伊那市出身だった縁で、親戚から送られてくる上伊那地方産のリンゴの味が気に入っていた。

 会社が農業を中核にした新事業を模索していた2011年、ジュースやジャムの加工などと比べて市場が未開拓だとして、哲郎さんにシードル造りを提案。事業化を進めることになった。

 翌年から3年間、東京の専門学校でシードルやワイン、日本酒などの製造を学んだ。卒業した15年から、山形村のワイナリー(ワイン醸造所)でシードル醸造に関わり、16年8月、醸造所をオープンした。

 社員は入倉さんを含めて2人。研修生1人を加えた3人で、年間6キロリットル、10種類のシードルを造っている。原料は90%以上が地元の横山産で、「酸味に優れている」という。

 こだわりは、リンゴの配合のバランス。一つのシードルに十数種類使う醸造所もあるが、カモシカシードル醸造所は2、3種類。酸味や香り、味わいなどそれぞれの品種の特徴を出すことに腐心する。それが結実したのが「カモシカシードル・ラ・ドゥージィエム・セゾン」(甘口)だ。

 8月に都内で開かれた初の「フジ・シードル・チャレンジ2017」で最高位のトロフィー賞に次ぐ金賞(8点)を受賞。入倉さんは「うれしかった。うまくいきすぎかな」。酸味の強い紅玉に、甘みのあるシナノスイートをブレンドし、「爽やかな酸味に軽めの甘さを出せた」と振り返る。

 醸造所は、国内在住のフランス人が買いに訪れるなど外国人にも人気だ。入倉さんは「ドイツ、フランス、英国など本場のコンクールで勝負したい」と今後を見据えている。

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