北佐久郡軽井沢町の文学館「軽井沢高原文庫」は10月9日まで、大正から昭和にかけて社会問題や歴史を題材に長編小説を書き続けた作家野上弥生子(1885〜1985年)を紹介する特別展を開いている。写真や原稿、書簡など約200点を展示し、作家としての歩みを振り返っている。
大分県臼杵市生まれの野上は、15歳で東京の女学校に進学。夏目漱石門下で同郷の野上豊一郎(後に英文学者、法政大総長)と結婚、小説を書き始めた。21歳で書いた習作「明暗」に対し、「明暗の著作者もし文学者たらんと欲せば漫然として年をとるべからず文学者として年をとるべし」と漱石から批評の書簡をもらった。展示ではその書簡の写真を紹介している。
代表作「迷路」「森」の原稿、安保反対デモに参加した時の写真、北軽井沢(群馬県長野原町)の山荘での疎開生活が書かれた日記なども展示。副館長の大藤敏行さん(54)は「99歳まで書き続けた作家の生涯と文学について知ってもらいたい」と話す。
特別展を機に、1996年に北軽井沢から軽井沢高原文庫敷地内に移築復元した野上の書斎兼茶室のかやぶき屋根をふき替える工事も今年5〜6月に行い、再公開した。会期中無休。午前9時〜午後5時。入館料は大人700円、小中学生300円。問い合わせは同文庫(電話0267・45・1175)へ。