企画展で初公開される「家老職任命書」など=福井県大野市城町の武家屋敷旧内山家

企画展で初公開される「家老職任命書」など=福井県大野市城町の武家屋敷旧内山家

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大野藩舞台の小説ちなみ企画展 藩営商店の帳簿を初公開

福井新聞(2018年1月7日)

 大野藩を舞台にした本紙連載小説「わが殿」にちなんだ企画展「家老 内山良休」(大野市教委主催、福井新聞社共催)の3期展(最終章)が、大野市城町の武家屋敷旧内山家で開かれている。後の家老、内山七郎右衛門(しちろうえもん)良休(りょうきゅう)が展開した藩営商店「大野屋」の帳簿や家老職任命書などを初公開。大野屋の関連物品や弟隆佐(りゅうすけ)の日記、パネルなどを含め計25点が並ぶ。2月末まで。

 大野藩主・土井利忠(としただ)が藩政改革令「更始(こうし)の令(れい)」を発して以降、銅の産出量を増やすなどして藩財政の立て直しに活躍した良休。1855年には特産だった「刻みタバコ」の販路拡大を図り、大阪に藩直営の大野屋1号店を開店した。その後、領内に本店「大坂屋」を構え、函館や横浜、神戸などにも出店。各地の特産物を流通販売し、藩財政に潤いをもたらした。

 初公開の帳簿「蝦夷口掛硯日払帳(えぞぐちかけすずりひばらいちょう)」では函館店や、藩が造船していた西洋型帆船「大野丸」に関する収支がつづられている。支店で唯一現存するとみられる元三国店(坂井市)の建物の平面図もパネルで紹介している。

 大野市教委学芸員は商店事業について「通常は倹約や年貢の引き上げを行うが、良休は商売に目を付けて外貨を得ており特異」とする。大野屋の営業形態はフランチャイズ形式の基礎になっているなど、良休の手法は現代につながっている。

 功績を残す一方で、藩財政のやりくりや穀物の価格高騰に不満を抱える藩士や町人たちからやっかみを受けることもあった。これらが原因で辞意を伝える良休に対し利忠は60年、良休を家老職に任命。任命書には良休を気遣いつつも「これまで以上に熱く仕事に励んでほしい」との思いがつづられている。家老就任を受け、良休が立てた七つの誓い「誓紙前書」も初公開している。

 学芸員は「利忠は最大の理解者で推進者。利忠の思いをくみ取った良休は、与えられていた処遇以上の振る舞いで期待に応えようとした」と2人の関係性を説明。「大野藩は改革を進め、黒字で明治時代を迎えた全国的に珍しい藩。展示物を通して大野藩の頑張りを感じてほしい」と話している。

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