「REINEDEER」のスキー板を手にする高木さん。金箔や漆、螺鈿といった伝統工芸で仕上げている=東京

「REINEDEER」のスキー板を手にする高木さん。金箔や漆、螺鈿といった伝統工芸で仕上げている=東京

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高級スキー用品、世界に 飯田にブランド拠点事務所開設へ

信濃毎日新聞(2018年1月9日)

 一般社団法人国際芸術伝統工芸協会(東京)代表理事でパリ在住の高木美香さんが2018年、自身が立ち上げた高級スキー板やウエアを展開するブランド「REINEDEER(レインディア)」の拠点事務所を飯田市内に開設する。漆や金箔(きんぱく)、螺鈿(らでん)といった伝統工芸で仕上げるスキー板などを、インバウンド(海外誘客)で県内外を訪れる外国人スキーヤーや、欧州の富裕層らにアピールする考え。「長野発の世界ブランドにしたい」と意気込む。

 長野は冬季五輪開催などにより欧州で知名度があるため、高級スキー用品などの販路開拓や情報発信の拠点に選んだ。飯田市に事務所を設けるのは、市内での起業や新規事業の展開を支援する「I―Port(アイポート)」のサポートを受けるため。市が県や日本貿易振興機構(ジェトロ)長野貿易情報センター、地元金融機関などと17年8月に設立した組織で、資金調達や販路開拓などで協力する方針だ。スキー板の製造は今のところ、北海道を拠点とする予定。

 高木さんは16年度、経済産業省のJAPANブランド育成支援事業の採択を受け、日本の伝統工芸を組み合わせたスキー板の開発に着手。欧州のワールドカップ(W杯)チームのスキー板製造を手掛けた職人や漆塗りの職人などと連携し、3シリーズ計14種類を完成させた。海外での滑走テストや耐久試験を含め、開発に約5千万円を投じた。

 最高級の「ハンドメイド」シリーズは風神雷神図屏風(びょうぶ)や家紋、東京五輪のエンブレムにも採用された市松模様などをモチーフにデザイン。1セットずつ手作りし、45万1千〜112万円(税抜き)で販売する。

 高木さんは愛知県出身。東京大を卒業後、欧州に留学し、競売大手のサザビーズ(英)やクリスティーズ(仏)の学校で17〜20世紀の家具や美術工芸品を学ぶなどした。アンティーク家具のディーラーとしてパリで起業し、オートクチュール(高級注文服)の毛皮ブランドも設立。毛皮の裏地に着物地を採用し、日本の伝統工芸の職人とも交流するようになった。

 転機は、11年の東日本大震災。震災で傷ついた日本の力になりたいと、漆産業が盛んな岩手県二戸市の浄法寺地区などを巡り、伝統工芸品を海外で売るための商品提案をして回った。事業推進には国の支援が必要と考え、国際芸術伝統工芸協会も設立した。

 生活習慣の違う海外で、家具や食器を売ることに限界を感じ、発案したのが伝統工芸とスポーツ用品の組み合わせ。スキーは欧州人になじみ深く、海外誘客の今後の成長も見込めると判断。板を手始めに、ウエアや小物などにも商品展開を広げる構想だ。

 1月にはドイツ・ミュンヘンで開く国際見本市でスキー板やウエアをPRする。外国人は用具をスキー場で買うのが一般的といい、国内販売は県内や北海道のスキー場を中心とする考えだ。高木さんは「来日する外国人客が憧れ、買いたくなる総合ブランドにしていきたい」と話している。

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