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電気機関車「帰郷」願う 飯田線の前身、ファンら奮闘

信濃毎日新聞(2018年3月1日)

 県内外の鉄道ファンでつくるJR東海ファンクラブ(田中光明会長)が、かつて飯田線の前身、伊那電気鉄道を走っていた電気機関車ED31形を譲り受けて飯田市で保存しよう―と、活動を始めた。クラブ副会長を務める飯田市三穂の代田芳実さん(74)ら有志10人が2月中旬、現在保有している近江鉄道(滋賀県彦根市)に出向いて譲渡を要望。今後、「帰郷」実現に向けて沿線の市民に広く情報発信していきたい考えだ。

 近江鉄道によると、この車両は、伊那電気鉄道辰野(上伊那郡辰野町)―飯田(飯田市)間が開通した1923(大正12)年、国内メーカーが製造した。同区間が国鉄飯田線になった後も木材やコメ、繭を運搬する貨物列車として55年ごろまで走り、その後、近江鉄道が国鉄から5両の払い下げを受けた。近江鉄道では、86年まで貨物列車として運行。うち一部は10年ほど前まで工事用車両として使っていた。既に5両とも退役し、うち3両は解体され、2両が保管されている。

 鉄道博物館(さいたま市)によると、電化された路線が少なく電気機関車は外国製が主流だった大正期に、国内で製造されて現存する車両は数少ないとみられるという。

 近江鉄道は昨年12月から、保有する車両のうち、使われていない一部車両の処分を進めている。ED31形2両については、既に各地の複数の団体から譲渡の要望が寄せられているといい、運搬費用を負担することを条件に、自治体や民間団体への譲渡を含めて処分案を検討している。

 飯田市を拠点に活動するJR東海ファンクラブは、車両を同市まで運ぶのに600万〜700万円はかかると見込んでいる。クラブは、今後も実現に向けて同社側とやりとりを重ねるとともに、保存場所の候補地について市など関係機関との協議を進めていく考えだ。実現可能性が高まってくれば、運搬費用に充てるための募金活動などを行いながら、機運を盛り上げていく方針という。

 代田さんは「伊那谷は国内でもいち早く電気鉄道が通った地域で、当時の関係者の地域への思いを感じる。飯田線の歴史を当時の車両を見ながら語り継ぐことができる点で遺産的な価値がある」と強調。「地域の人に望まれる形で車両を迎えるために活動していきたい」と話している。

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