念仏道場に取り付けられた唐狭間(正面上)。天人が彫られている=南砺市猪谷

念仏道場に取り付けられた唐狭間(正面上)。天人が彫られている=南砺市猪谷

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井波彫刻は五箇山全域を網羅 専門家が「日本遺産」後押し

北日本新聞(2018年5月30日)

 南砺市井波地域の彫刻師が手掛けた社寺彫刻や獅子頭などが同市の五箇山地方のほぼ全域に普及していることが、長谷川総一郎富山大名誉教授(72)=同市本町(井波)=の調査で確認された。この研究成果により、井波彫刻を軸にした日本遺産の物語性に広がりが生まれ、文化庁による認定につながった。

 長谷川名誉教授が五箇山の南砺市平、上平、利賀地域内の約40集落で調査したところ、全てに社寺彫刻や獅子頭などがあった。明治から昭和の戦後にかけての作品が目立つという。

 最古の物は、猪谷(上平)の念仏道場にあった欄間に似たタイプの寺院彫刻「唐狭間(からさま)」で、江戸後期の「弘化四年」(1847年)と墨書きされていた。作者として、井波彫刻の祖の流れをくむ「田村眉月(びげつ)」の名も記されていた。

 念仏道場は、五箇山に点在する浄土真宗布教の場。猪谷以外の集落でも、ほぼ全てに唐狭間があった。天人を彫ったケースが多く、長谷川名誉教授は「東本願寺や井波別院瑞泉寺の彫刻に倣っている。真宗を通じた井波と五箇山との関わりの深さがうかがえる」とみている。

 神社には、竜などの彫刻が飾り付けられていた。住民からの聞き取りで、各家に欄間が普及していることも分かった。

 この研究成果は、「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」と題した日本遺産のストーリーの中で、「五箇山の集落にも井波彫刻は人々の暮らしとともにある」という記述に反映された。33の構成文化財には、瑞泉寺などと共に五箇山の寺社群や相倉集落が盛り込まれた。

 これにより、江戸期の瑞泉寺再建をきっかけに彫刻文化が井波に根付き、五箇山地方にまで、その影響が波及したという奥深い物語に仕上がった。

 文化庁は「五箇山を含むエリアが『木彫刻美術館』と解釈できる。そうした広がりも今回の認定に当たって評価された」としている。

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