いわさきちひろの若き日を描いた劇団前進座の新作に出演する中嶋宏太郎さん=福井新聞社

いわさきちひろの若き日を描いた劇団前進座の新作に出演する中嶋宏太郎さん=福井新聞社

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いわさきちひろの原点描く 劇団前進座の新作舞台

福井新聞(2018年8月26日)

 今年生誕100年を迎える絵本画家いわさきちひろの若き日を描いた劇団前進座の新作「ちひろ―私、絵と結婚するの―」(福井新聞社後援)が今冬、ちひろの生まれた福井県越前市で上演される。あわら市出身の中嶋宏太郎(本名中嶋宏幸)さん(51)は、ちひろが働いた新聞社の先輩編集部員を演じる。「子どもたちの幸せと平和を願い、絵筆を握り続けたちひろの原点が詰まっている。若き日のちひろの生きざま、心情を多くの人に知ってほしい」と語った。

 55年の短い生涯で9500点を超える作品を残したちひろ。人生の転機となった27歳から30歳頃までを舞台化した。台本は前進座の女優高柳育子さん、演出に文学座の鵜山仁さんを招き、ちひろの長男で、絵本・美術評論家の松本猛さんが原案を作成した。11月12日東京で初演、今年は12月25日の横浜市まで巡演する。

 終戦直後の1946年、空襲で家を焼かれ、戦争で傷ついた心を抱えた27歳のちひろが誰にも告げず、疎開先の長野県から一人上京、新聞社を訪ねる場面から舞台は始まる。記者として働き、紙面の挿絵を一手に担当するなど、絵描きとしての仕事も広がっていく。仕事や画家仲間との交流、愛する人との出会いの中で、封じ込めていたつらい過去を乗り越え、苦しみながらも見つけた進むべき道...。

 中嶋さん演じる29歳の先輩編集部員は、新聞社でちひろの周囲に実在し、詩や絵を志した数人をモデルにした架空の人物。「ちひろが画家として一本立ちしたいと思っているのと同様に詩作に夢をかけ、やがてちひろに恋心を抱くようになる」と役どころを紹介。「(将来夫となる)弁護士を目指す善明さんと、ちひろの仲むつまじい様子を見て絶叫する姿は共感してもらえるかも」と笑う。

 戦死した美大生の友が床下に残した胡粉(ごふん)をちひろに託し遺志をつないだ場面は、戦争の悲惨さがにじみ出る。「ちひろが絵に込めた願いは平和。平和でないと芝居もできない」と思いを重ねる。「子どもは命であり、未来。子どもを苦しめる戦争だけは絶対に許してはならないとの、ちひろの信念が感じられる舞台になった」と言葉に力を込める。

 「絵と結婚するの」とのタイトルには、最初の結婚で夫が自殺し二度と結婚しないと心に決め、画家として生きる決意が込められている。舞台上では、場面に応じちひろの作品が映し出される。ちひろ役を有田佳代さん、善明役を新村宗二郎さんが演じる。

 中嶋さんは藤島高から電気通信大へ進学。卒業後に文学座演劇研究所に1年間在籍した後、前進座に入った。さまざまな時代劇、現代劇、歌舞伎の作品に出演してきた。

 公演は12月20日昼夜、越前市文化センターで。越前市文化振興・施設管理事業団が共催。午後1時半、同6時半開演。A席指定5千円、B席自由4千円、学生自由席千円。問い合わせは前進座全国公演事務所=電話0422(49)2633。

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