私設美術館に並ぶ佐々木大岳の日本画などを鑑賞する孫の晃一さん=福井県鯖江市下野田町

私設美術館に並ぶ佐々木大岳の日本画などを鑑賞する孫の晃一さん=福井県鯖江市下野田町

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私設美術館「佐々木大岳記念館」開館20年 孫が自宅敷地に建設、色鮮やか掛け軸ずらり

福井新聞(2018年9月5日)

 福井県鯖江市下野田町の住宅街に建つ私設美術館「佐々木大岳記念館」は今秋、開館から20年を迎える。同館がスポットを当てる大岳は明治期の美術界の巨匠、岡倉天心らに師事した日本画家で、色鮮やかな掛け軸など約30点が並ぶ。開設した孫の佐々木晃一さん(76)は「オープン当初は市内外から大勢の人が訪れた。地元の子どもたちにも郷土画家の存在を知ってもらいたい」と話している。
 大岳は1870年に同市で生まれ、東京美術学校(現東京芸術大)で天心や川端玉章らに師事した。31歳で同校を卒業した後は武生高等女学校などで美術教諭を務め、1946年に他界。画風は緻密、繊細で色彩豊かで、人物や花鳥の掛け軸など多数の作品を残した。
 45歳の時に名古屋から実家に戻った晃一さんは、押し入れにある祖父の大量の遺作に驚き「もったいない」と感じたという。地域の人たちに観賞してもらおうと98年11月、自宅敷地内に記念館を建てた。鉄骨2階建てで、2階部分の約50平方メートルを展示室とした。
 展示の目玉は京都・仁和寺の重要文化財を写生した「聖徳太子孝養之図」。大岳の日記などによると、原画では衣の模様が剥がれ落ちてしまっていたが、太子ゆかりの法隆寺に残る布地を参考に描いたという。大岳が「最高の出来」と語ったとされる作品。
 晃一さんの誕生記念に描いた日本画もある。桜の下で馬に乗る武将を描いたもので、勇ましい姿に孫の成長を願う心が感じられる。展示室には作品のほか、大岳本人の写真や画材道具、一乗谷などを描いたスケッチ帳もある。
 「作品を見ると優しかった祖父を思い出す」と晃一さん。即興で描いてくれた汽車の絵が今にも走りだしそうだったのを覚えているという。「鯖江といえば眼鏡や漆器などものづくりのまちだが、芸術面でも優れた人物がいたことを見てもらいたい」と話している。

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