県と関西電力は17日、関電黒部ルートを一般開放することで合意し、協定を結んだ。2024年を予定し、現状の無料公募見学会の5倍となる年間最大1万人を受け入れる。ルートの全面開通から約60年、これまでつながっていなかった立山黒部アルペンルートと黒部峡谷が周遊できるようになり、一帯の魅力がいっそう高まる。急増する訪日外国人旅行者や国内観光客の誘致に向けて大きな目玉となる。
県がルートを行程に組み込んだ旅行商品を企画・運営し、旅行代理店を通じて広く販売する。土日祝日にも企画し、参加人数は原則6~10月に8千人。降雪の状況などを考慮しながら5、11月の実施も検討する。料金や参加要件などは今後詰める。
関電はトンネル内の落盤対策や避難経路の整備など安全対策工事を行う。期間はおおむね5年を見込み、終わり次第開放する。費用は関電が負担するが、具体的な金額は明らかにしていない。
1996年に始まった平日限定の見学会は来年度以降、土日祝日も開き、旅行商品の販売開始後に廃止する。2019年度は、7~9月の土日祝日の4日間で受け入れる。
黒部ルートは黒部峡谷鉄道の終点、欅平(けやきだいら)と黒部ダムを結ぶ約18キロの物資輸送路で、関電がダムや水力発電所の修理をしたり、資材を運んだりするために使っている。1956年に国が「竣工(しゅんこう)後はこれを公衆の利用に供すること」との条件で建設を認めた。しかし、59年の全面開通後、60年近くたった今も関電は、安全面に問題があるとして開放していなかった。
見学会で年間2040人を受け入れているものの、昨年度の抽選倍率は約5倍。平日のみの開催で、参加できない人も多かった。県は観光振興に欠かせないとして関電に全面的な開放を長年求めてきた。両者は昨年から「『立山黒部』世界ブランド化推進会議」で土日の受け入れや通行人数の拡大、安全対策について本格的に協議していた。
17日に東京都千代田区の都道府県会館で行われた協定締結式には、石井隆一知事と関電の岩根茂樹社長が出席した。石井知事は「電源開発の歴史が学べる貴重な産業観光ルート。富山の観光振興はもちろん、観光立国に寄与できることを願う」と述べ、岩根社長は「黒部川水系の発電所建設は難工事の連続で私たちにとって特別な思い入れがある。多くの人に黒部の地を体感してほしい。世界ブランド化の実現へ、県と共に歩んでいきたい」と語った。