白山市竹松町で30日、明治初期から続く年末の伝統行事「田んぼのお歳暮まわり」が行われた。農家が薄く雪が積もる水田に豆殻を供えて今年の収穫に感謝し、霊峰白山に向かって来年の豊作を願った。
あられが時折降る中、古川淳一さん(77)は長男の博人さん(55)とともに鍬(くわ)を持って水田11枚を回った。取水口のそばに長さ約60センチの豆殻を挿し、手取川流域に水の恵みをもたらす白山の方向に静かに手を合わせた。
竹松は藩政期、土地がやせていたため他の村に比べて米の収穫量が少なく、年貢米の徴収に手心を加えてもらう代わりに、役人にお歳暮として雑穀を贈っていたと伝えられる。明治の廃藩置県で年貢を納める必要がなくなると、役人の勧めで水田に豆殻を供えるようになったという。
奥能登の農耕儀礼「あえのこと」になぞらえ「加賀版あえのこと」とも呼ばれる風習で、現在は古川さん方を含め3軒が続けている。
古川さんは「豊富な水は白山の神様のおかげ。体が元気な限り、続けていきたい」と話した。