曽宮一念さんの「八ヶ岳夏雲」(1965年)

曽宮一念さんの「八ヶ岳夏雲」(1965年)

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孤高の画家、曽宮一念を紹介 福井市美術館、初公開作品も

福井新聞(2019年1月11日)

 日本近代洋画の確立期に活躍した風景画家、曽宮一念さん(1893~1994年)が代表作「八ヶ岳夏雲」を描いたのは、緑内障による視力障害が進んでいた65年。山岳エッセイスト増永迪男さん(福井県福井市)によると、積乱雲が空を覆い、トウキビが傾くほどのダウンバーストが吹く中で、八ケ岳が見えることは現実にはあり得ないという。見える限りの視力で風景の芯をとらえ、人生に立ち向かう自らの心境を託して表現したからこそ人の心をとらえた。そんな孤高の画家を紹介する展覧会(福井新聞社共催)が1月12日から、福井県福井市美術館で開かれる。

 曽宮さんは60歳を迎えたころ、東京美術学校で同級だった彫刻家雨田光平と福井で再会。晩年の友として親しく交流した。福井を訪ねるとき"定宿"としていたのが、雨田を慕う増永さん宅だった。

 展覧会は、増永さんが昨年手がけた評伝「雲を見る人―孤高の風景画家 曽宮一念」(福井新聞社)の刊行を記念し、NPO法人「農と地域のふれあいネットワーク」が企画。作品は増永さんが購入したり、一宿一飯の恩義にと贈られたりした油彩画やパステル画、水彩画、版画、書など後半生の16点で多くが初公開。雨田の作品4点も展示する。

 東京美術学校を卒業した曽宮さんは、初期こそ兄事した洋画家中村彝(つね)らの影響で写実に傾倒したが、24年に中村が亡くなるとその枠から外れ「心を動かす風景の奥に潜む、美の定着」(評伝より)へと作風を変化させていった。国画会展に出展した20号の「八ヶ岳夏雲」や「スペインの野」(70年)の極太の描線や荒々しい筆致、大胆な色彩表現とデフォルメは、画家の内面的な感情を吐露するかのように力強い。

 絶筆となった墨画「毛無山」(70年)は、増永さん宅で描かれたもの。左目の狭い視野しか効かなかった曽宮さんは、幅40センチの和紙を横断する波線を引くのに筆を2回継いでいる。描き終えると「これで画はおしまい」と筆を置いたという。

 山や岩など地球の骨ともいえる「景」に、雲や霧などの動きを止めない「風」が加わって、初めて人の心を打つ「風景」が現れるというのが画業を貫く主題だった。増永さんは「曽宮さんの風景に美を見つめるまなざしは、戦争をまたいだ激動の時代の潮流の中でも『景』のように動じなかった。これほど芯の通った画家が福井とゆかりを持っていたことを多くの人に知ってほしい」と語った。

 展覧会は20日まで(15日休館)。入場無料。12日午後2時からは、増永さんと福井市美術館の石堂裕昭館長の対談がある。

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