水本さんの作品を紹介する美術館の開設準備に当たる松村さん=砺波市庄川町金屋

水本さんの作品を紹介する美術館の開設準備に当たる松村さん=砺波市庄川町金屋

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平和の遺志継ぎ、石像美術館 戦友悼み続けた故水本さん 庄川で友人の松村さん開設へ

北日本新聞(2019年8月15日)

 太平洋戦争で犠牲になった戦友の鎮魂を祈って亡くなるまで石像を彫り続けた友人の作品を広く紹介したいと、砺波市庄川町高儀新の松村優さん(74)が来年4月、庄川町金屋に展示館を開く。6年前に亡くなった水本一太郎さん(同市庄川町高儀新、享年87)の工房跡を活用した珍しい「石像美術館」だ。柔和な表情を浮かべる石像の数々を鑑賞してもらい、平和と不戦を願った水本さんの遺志を伝えていく。 

 旧庄川町の関連団体で観光宣伝の仕事をしていた松村さんは1999年ごろ水本さんと知り合った。石材業の傍ら石像彫刻に精魂を傾ける水本さんの作風にほれ込み、個展開催を勧めるようになった。

 工房に出入りして親しくなると、観音などを彫り始めたきっかけも話してくれた。海軍に入り新潟から朝鮮半島へ向かう途中で船が爆撃を受け、大勢の仲間が命を落とす姿を目の当たりにしたことが原点だった。自身は攻撃された所とは反対側の船上にいて助かったといい、「いつも通りの配置だったら死んでいた。生き残ったのは偶然」と語っていたという。

 松村さんは、自身が特攻基地の置かれた鹿児島県知覧町(現南九州市)で生まれ育った縁を感じ、水本さんの観音菩薩像を知覧特攻平和会館に寄贈する仲立ちもした。

 水本さんは約60年にわたり地蔵や不動明王、大黒などを500体近く彫った。事故で大切な人を亡くした遺族らからも依頼され、寺に安置された作品もある。

 水本さんの死後、松村さんは、優れた作品が眠ったままなのはもったいないと遺族の協力を得て、工房跡を「水本一太郎翁石像彫刻美術館」にすることにした。

 4年ほど前から仕事の合間に壁板や天井を張ったり、飾り棚を作ったりして設備を整え、ようやく開館のめどが立った。200点近い石像のほか、のみなど工具も展示する。

 松村さんは「多くの人が素晴らしい石像を見て、水本さんの思いを感じ取ってもらえればうれしい」と話している。

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